>  今週のトピックス >  No.2305
金価格暴騰の背景に金融市場の異変が…
● 金が過去最高値を更新
  金の価格が暴騰している。ニューヨークの先物市場では9月6日に1トロイオンス1923ドルの史上最高値を付け、年初からの上昇率は35%に達した。円建ての国内先物価格も過去最高値を更新している。なぜ金がこんなにも値上がりしているのだろうか。その背景には、世界の金融市場の異変がある。
  金融商品としての金の特徴は、まず金利が付かないこと。例えば、国債などの債券を買えば必ず金利が付くし、株を買えば配当が付く(もちろん無配の株もある)。通貨に投資する場合でも、円のような低金利の通貨を売って、豪ドルのような高金利の通貨を買えば、金利差益が見込める。金や原油などのコモディティー(商品)はこうした金利が付かないので、投資家は値上がり益のみを期待していることになる。
  裏を返せば、値上がりが期待できなければ、金を持っていてもあまり意味はない。だから余剰資金のある投資家は本来なら、金を買うよりは「無リスク資産」といわれる国債を買って少しでも金利収入を得ようとする。ところが、市場ではソブリンリスク(政府債務の信認危機)がテーマとなっており、国債やリスク資産である株式は買いにくい状況だ。
● ドルやユーロは弱含む
  外国為替市場では主要通貨のドルとユーロがそろって弱含んでいる。景気低迷が続く米国では、米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和第3弾(QE3)に踏み切るとの観測も出ている。欧州では債務危機の終わりが見えず、ドルやユーロに資金を振り向けるのは難しい。
  株や債券に投資しにくく、ドルやユーロに資金を振り向けにくい状況では、どうしても消去法で金が買われてしまう。これが今、金融市場で起きている現象だ。
  こうした状況下で、唯一金を売っている投資家がいる。それが日本の個人投資家だ。銀座の宝飾品の買い取りサービスには長蛇の列ができているという。
● なぜ日本人だけが金を売るのか?
  なぜ世界中の投資家がせっせと金を買っている中で、日本の個人だけが金を売っているのか。
  それは日本の金利が実は高いからだ。日本はご存知の通り世界で最も政策金利が低い国の一つだが、政策金利から物価上昇率を差し引いた実質金利でみると、実は「高金利」だ。それは新興国などで物価が上昇している半面、日本はデフレで物価が下落しているためだ。
  新興国ではお金を銀行に預けても利息収入が物価上昇に追いつかないため、どうしても不動産や金などの「実物資産」に投資資金が向かいやすい。一方日本では銀行にお金を預けてもろくな金利がつかないが、物価が下落しているため、お金(円)の相対価値はむしろ高まる。これがわざわざ金を売って円を得ようとする行動の理論的な裏づけとなっている。
(内容は9月13日執筆時点のものです)
2011.09.20
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