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「大腸ポリープ」告知における留意点
  大腸ポリープとは、大腸の内腔へ突出した粘膜の隆起性病変の総称です。医療保険の給付金支払請求で一番多い手術のひとつが、大腸ポリープ切除術でもあり、新契約時の告知でも目にすることが多くなりました。
  大腸ポリープ患者の増加は、日本人の食生活の欧米化により、動物性の脂肪摂取の増加と、食物繊維の摂取の減少が原因ともいわれています。40代から増え始め、男性に多く見られます。
  ポリープが大きくなると出血したり、腹痛や下痢、腹部膨満、便秘などの症状が現れますが、ほとんどが無症状のため人間ドックなどの検査を契機に発見されることが多くなっています。
● 種類
  病理組織学的に大腸ポリープの80%は「腺腫」とよばれる腫瘍です。腺腫が大きいほど異型度が高く、がん化率も高いといわれています。性質の違いで「腺種性」「炎症性」「過誤腫性」「過形成性」の4つに分けられます。
   腺種性ポリープ
  大腸粘膜の絨毛間のくぼみの中にある腸液を分泌する腺組織の表面にできたポリープで、最も多く見つかります。大きくなるとがん化の危険性もあります。
   炎症性ポリープ
  がん化の可能性はほとんどないものですが、潰瘍性大腸炎やクローン病、腸の炎症性疾患の後にできるので注意が必要です。
   過誤腫性ポリープ
本来あるべき組織が過剰に発育した状態で、2つに分類されます。
    
1)  若年性ポリープ
直腸に散在し、出血しやすいポリープですが、がん化の心配はありません。
2)  ポイツ・イエガー症候群
食道以外の消化管に発生する先天性の疾患で100個以上のポリープの発生した場合、消化管ポリポーシスという病気に分類され、がん化の危険性もあります。
   過形成性ポリープ
年齢と共に多くの人にみられ、一種の老化現象ともいえます。
● 治療
  腺腫の大きさが1cmを超えると約3割が、2cmを超えると約6割ががん化するとの報告もあります。よって、5〜6mm以上の腺腫に対しては積極的に内視鏡下大腸ポリープ切除術が行なわれています。それ以下の大きさでも、平坦型で陥凹のあるものや、悪性の疑いのあるものはその場で切除します。
● ご契約をいただく際には
  切除した大腸ポリープが、良性であること(が証明できること)が重要です。手術の術式、ポリープの大きさや入院日数などを告知されることをおすすめします。死亡保険は保険金削減〜標準体(病理組織診断について記載のある診断書の提出があった場合など)で、医療保険については、再発の可能性を考慮するため、一定期間は部位不担保での加入となるでしょう。
  大腸ポリープが小さすぎて完全に切除できない場合には、生検が行なわれます。生検の場合には、切除ではないため大腸ポリープが体内に残存しています。よってその後1〜2年は大腸内視鏡検査で経過観察し、大きくなった大腸ポリープに対しては切除術が行なわれます。このように経過観察中(大腸ポリープが残存している)の場合は、死亡保険については、保険金削減などの条件付きで、医療保険は部位不担保等の条件をつけての加入となるでしょう。
  
上田 香十里(かんだ・かとり)
株式会社査定コンサルティング代表取締役
  現在、複数の保険専門紙・メディアにて保険医学や告知書の正しい書き方に関する記事を執筆中。近著に「知っておきたい!保険と病気と告知のはなし」(小社刊)、「よくみえる! 医療・先進医療・介護のはなし」(小社刊・共著)がある。また、関連するセミナーを開催、講師としても活躍中。保険会社各社の引受査定支援業務、支払査定支援業務、支払検証、診断書翻訳、関連セミナーなどを行っている。日本アンダーライティング協会会員。日本保険医学会賛助会員。一般財団法人大妻コタカ記念会理事。
  http://www.hokensatei.com/
  
2011.10.17
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