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個人投資家、超安全志向に
● 定期預金や円建て債券に資金流入
  日本の個人投資家の安全志向が鮮明になっている。定期預金や円建て債券へ資金が流入する一方で、外貨建て投資信託などリスク資産からは資金が流出し始めているのだ。1,400兆円超の金融資産を抱える日本の個人だが、株式への投資割合はわずか6%と先進国の中では目立って低く、もともとリスク投資には消極的だ。国内に滞留する個人マネーが運用難の主因である低金利と円高をもたらすという皮肉な構造となっている。
  日銀が公表したデータによると、7月末時点の定期預金の残高は約200兆円と、2001年12月以来の高水準となった。残高の増加は4ヵ月連続で、米欧経済の不透明感や国内景気の減速懸念などから、個人投資家が安全志向を強めていることがわかる。投資信託では、これまで人気のあったブラジルレアル建ての商品から資金が流出する一方、円建て債券で運用する投信への資金流出が急拡大している。
● FXでも外貨買い意欲が低下
  外国為替証拠金取引(FX)でも、これまではユーロや豪ドル、南アフリカランドなどの外貨が安くなる(円高になる)と逆張りで外貨を買う動きが活発になったが、通貨によってはそうした押し目買いが明らかに減少している。FXを手掛ける個人は国内の投資家の中でも比較的リスクを選好する度合いが高いが、欧州の債務危機や世界経済の減速懸念で、こうした投資家までリスクを避けようとしているようだ。
  前述の通り、日本の個人は1,400兆円の金融資産を抱えている。世界全体の個人金融資産の7分の1を占めると言われ、世界的にみても極めて裕福な国民といえる(もちろん個人差はある)。ところが、個人がリスクをとらずに銀行にばかりお金を預けても、銀行は景気のあまり良くない国内に貸付先がないため、結局はその余剰資金で国債を買うしかない。そのため、いくら政府の財政赤字が増えて「財政が破綻するかもしれない」と言われても、日本国債の市場は暴落するどころか価格は上昇(金利は低下)しているわけだ。
● 低金利と円高で運用難
  個人が外貨建て資産を積極的に買っているわけではないので円安にもなりにくい。もともと株式などのリスク資産への投資は消極的なわけで、ますます定期預金や円建て投信に資金が流入する「悪循環」となっている。結局、個人投資家が安心してリスクをとる環境を作らないと、いつまでたっても低金利で円高の状況が続き、資産運用で収益を上げるのは難しいだろう。
(内容は10月18日執筆時点のものです)
2011.10.24
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