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「胆嚢ポリープ」告知における留意点
  胆嚢(たんのう)ポリープとは、胆嚢の内腔へ突出した粘膜の隆起性病変の総称です。小さいうちは無症状ですが、できる場所や大きさによって腹痛や不快感などの症状が現れることもあります。がん化したポリープでは、黄疸、発熱、下痢などの症状が見られます。
● 種類
   コレステロールポリープ
胆汁の成分であるコレステロールが胆嚢の内壁に沈着し盛り上がるもので、最も高率にみられがん化の心配もありません。
   過形成性ポリープ:
胆嚢の上皮細胞が必要以上に増殖したものです。
   炎症性ポリープ:
胆嚢炎を繰り返すことで組織自体が隆起したものです。
   胆嚢腺腫:
乳頭状腺腫と管状腺腫があります。基本的には良性ですが、一部がん化するものもあります。
   胆嚢がん:
胆嚢の粘膜から発生する悪性腫瘍です。
● 診断
  通常腹部超音波エコー検査で診断されます。近年人間ドックの普及などで発見率が高くなっています。体位変換で移動しない、音響陰影を伴わないなどから胆石と鑑別することができます。
  コレステロールポリープは、輝度の高い(キラキラ光る)点状エコーの集まりからなっていて、こんぺいとうのような有茎性隆起であり、多発することが多いです。
  これに対し腺腫はエコーレベルが低く、表面が平滑な楕円形または乳頭状隆起でほとんどが単発です。広基性で単発のものはがんであることが多いのですが、画像だけで良性、悪性を判断するのは難しいため、さらに詳しく調べるには超音波内視鏡検査(EUS)や、造影CT検査(造影剤を静脈注射して撮影する検査)、その他の検査を行うこともあります。
● 治療
  一般的には、5mm以下のポリープは1年ごとの経過観察でよく、5〜10mmのポリープは6ヵ月ごとに経過観察の対象となります。10mmを超えるものはがん化率が高くなるため、EUS(超音波内視鏡)などで良性と診断できれば経過観察しますが、悪性が否定できない場合などは胆嚢摘出を行うこともあります。胆嚢ポリープの大きさとがん化率は、サイズが大きくなると急激に増加します。
  ・0〜10mmでは5%
  ・10〜15mmでは25%
  ・16mm以上では60% ともいわれています。
  それほど大きくなくても、悪性の疑いのあるものは切除の対象となります。近年、腹部に数箇所穴をあけるだけの腹腔鏡下での胆嚢摘出が可能となりました。これを腹腔鏡下胆嚢摘出術と呼びます。
  しかしながら、上腹部に手術の既往のある人や高度炎症がある場合はがん化の可能性が高く、周囲への転移も疑われる場合などには、開腹手術の対象となることもあります。
● ご契約をいただく際には
  現在、胆嚢ポリープがある場合は、大きさが小さく、がん化の危険性が少ないと判断できれば死亡保険については標準体で加入できる可能性もありますが、医療保険については、将来手術となる可能性も考えられるため、部位不担保等の特別条件付きでの加入となるでしょう。
  既往症(手術歴あり)については、切除したポリープの大きさ、手術の術式、入院日数、術後の治療内容などを告知していただくとよいでしょう。病理所見のある診断書等の提出により悪性腫瘍が除外できれば、死亡保険・医療保険とも加入が可能でしょう。
  
上田 香十里(かんだ・かとり)
株式会社査定コンサルティング代表取締役
現在、複数の保険専門紙・メディアにて保険医学や告知書の正しい書き方に関する記事を執筆中。近著に「知っておきたい!保険と病気と告知のはなし」(小社刊)、「よくみえる! 医療・先進医療・介護のはなし」(小社刊・共著)がある。また、関連するセミナーを開催、講師としても活躍中。保険会社各社の引受査定支援業務、支払査定支援業務、支払検証、診断書翻訳、関連セミナーなどを行っている。日本アンダーライティング協会会員。日本保険医学会賛助会員。一般財団法人大妻コタカ記念会理事。
http://www.hokensatei.com/
  
2011.10.31
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