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面白くなっている厚生労働白書
  毎年発刊される厚生労働白書であるが、このところずいぶん内容が面白くなってきている。というのも、平成22年版からイラスト入りの「日本の1日」と「100人でみた日本」というものが載っているのだが、これが非常にわかりやすく面白い。
● 日本の1日
  まず「日本の1日」だが、出生・結婚から薬物事犯の逮捕者まで、1日あたりどうだったかを紹介している。
  これが平成22年版と23年版で同じ項目を載せているため、1年間の変化がひとめでわかることになる。
  一例を挙げてみよう。
  
  平成22年版 平成23年版
生まれるのは? 2,932人 2,935人 +3人
亡くなるのは? 3,129人 3,280人 +151人
人口の減少数は? 197人 345人 +148人
  ここでは無味乾燥な表となってしまうが、これがイラスト入りの見やすい形で表現されている。これによると、生まれる人の数より亡くなる人の数が圧倒的に多く、日本が人口減少国になっているのがよくわかる。
  他にも色々載っているのだが、苦笑いしながら見てしまったのが「6歳未満の子どもを持つ親が育児、家事に費やす時間は?」という記載があり、22年版も23年版もいずれも「夫:60分、妻:7時間27分」なのだが、ご丁寧に「※」印の注釈があり、「日本の男性が家事・育児をする時間は先進諸国の中でも最低水準です。」と書かれている。
  白書の読者層に男性が多いことを意識しているかどうかは不明だが、育児・家事に男性を参加させようとする意図が見えるようで、製作にあたった担当の方の苦労に同情したいところだ。
● 100人でみた日本
  同じく「100人でみた日本」も紹介しておこう。
  こちらは「人口」「雇用」などの項目について、日本を100人の国に例えたものだ。厚生労働省巻末の注釈に「『日本がもし100人の村だったら』池上彰著 協力:池田香代子(マガジンハウス2009)を参考としました。」とあり、良くできた作品をお手本にしているのがわかる。
  掲載されているうちの何点は以下のとおり。
  
  平成22年版 平成23年版
年齢15歳未満は? 13.3人 13.1人 −0.2人
年齢65歳以上は? 22.7人 22.9人 +0.2人
年齢75歳以上は? 10.8人 11.1人 +0.3人
仕事についているのは? 49.3人 48.9人 +0.4人
週35時間未満で働いているのは? 11.3人 13.4人 +2.1人
  これをみると、少子高齢化の進行と、短時間(週35時間未満)で働いている層が増えているのがわかる。少子高齢化問題と非正規労働者問題は日本の抱える大きな課題であるが、22年から23年の1年間だけでも深刻度を増してきている。
● 日本が抱える問題点が少しは見えてくる
  平成23年度版の副題は「社会保障の検証と展望 〜国民皆年金・皆年金制度実現から半世紀〜」である。年金・医療・介護などの社会保障に関連する話題は、公的年金支給開始年齢の引き上げ問題や、高額療養費の取り扱い基準の変更問題などをはじめとして盛んに報道されているところだ。
  厚生労働省は国民生活に直結することを取り扱う官庁であるだけに、わかりやすく伝える努力をしていかなければならないが、受け取る我々も積極的に情報を取りにいくことが大切だ。白書すべてとは言わないが、紹介した「日本の1日」と「100人でみた日本」の部分を見るだけでも今の日本の姿を俯瞰的に見ることができるというものだ。
データ出典元:厚生労働省「平成22年版厚生労働白書」「平成23年版厚生労働白書」
2011.10.31
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