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「扁桃腺肥大」告知における留意点
  食べ物や飲み物をはじめ空気や細菌など、様々なものが口や鼻を通して体内に入ってきますが、口腔内には病原体が体内に侵入するのを防ぐためのリンパ組織がいくつかあります。その中の口蓋扁桃は、口蓋垂(こうがいすい:俗称のどちんこ)の両側にあるアーモンド形の親指大のリンパ腺で、何らかの原因で肥大した状態を「扁桃腺肥大」といいます。
  なお、アデノイドは鼻の奥で口蓋垂の後ろにあり、咽頭扁桃(いんとうへんとう)とよばれます。
● 子供が扁桃腺肥大になりやすい理由
  小学生くらいまでの子供では、免疫システムの発達が不十分なため、しっかりした免疫システムを獲得しようと扁桃腺が活発に活動し生理的現象として扁桃腺は肥大します(その後縮小します)。中学生以降くらいになると、風邪をひいたり細菌やウイルスに感染した時に免疫反応が働き、結果として扁桃腺が腫れたり熱が出たりしますが、通常数日で治まります。
● 症状と合併症
  まず発熱です。これは、細菌やウイルスに対する防御反応の結果おこります。また、炎症による痛みや嚥下痛で口が開けづらくなったり、食事がとりにくくなったりします。首のリンパ節が痛んだり、硬くなったりすることもあります。症状が進行して炎症が広がると、扁桃腺周囲炎になったり、膿がたまり扁桃腺周囲膿瘍になったりする場合もあります。
  さらに炎症が波及し、浸出性中耳炎などの合併症をおこすこともあります。慢性的な場合などは、呼吸苦や鼻づまり、いびきなどを引き起こし、睡眠時無呼吸症候群の原因になることもあります。
● 治療
  扁桃腺が肥大しているだけで、特に症状がない場合は、通常は経過観察となります。発熱などの症状があって、扁桃腺炎を起こしていても、軽症であれば外来治療で抗生物質などの投薬を行います。重症な例では入院して治療することもあります。
  慢性的に扁桃肥大がある場合、肥大の程度が大きい場合、睡眠時無呼吸症候群を引き起こしている場合、急性で一過性でも呼吸困難などの症状が出ている場合、抗生物質が効かない場合などは、手術で切除します。
  IgA腎症や掌せき膿胞症、関節リウマチ等の全身疾患の原因が扁桃腺周囲の病巣となっている場合があり、扁桃の摘出により著効する(医療などにおいて薬や施術が著しく効果をもたらすこと)ことがあります。
● ご契約をいただく際には
  扁桃腺肥大の告知があるお客さまからは、下記を告知していただくとよいでしょう。
・  再発の有無(ある場合は、それぞれの治療時期、期間、治療内容)
・  入院の有無
・  手術の有無
・  原因(IgA腎症や関節リウマチ等、原因疾患が別にある場合には、その病気の査定基準となります)
  扁桃腺の摘出手術をしていれば再発は無いと考えられるため、死亡保険、医療保険とも標準体での加入が可能でしょう。
  何度も扁桃腺肥大を繰り返している場合、入院歴があるがまだ手術していない場合は、再発の可能性があるので、医療保険に関しては一定期間の部位不担保等の条件付きでの加入となるでしょう。
  
上田 香十里(かんだ・かとり)
株式会社査定コンサルティング代表取締役
現在、複数の保険専門紙・メディアにて保険医学や告知書の正しい書き方に関する記事を執筆中。近著に「知っておきたい!保険と病気と告知のはなし」(小社刊)、「よくみえる! 医療・先進医療・介護のはなし」(小社刊・共著)がある。また、関連するセミナーを開催、講師としても活躍中。保険会社各社の引受査定支援業務、支払査定支援業務、支払検証、診断書翻訳、関連セミナーなどを行っている。日本アンダーライティング協会会員。日本保険医学会賛助会員。一般財団法人大妻コタカ記念会理事。
http://www.hokensatei.com/
  
2011.11.28
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