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「声帯ポリープ」告知における留意点
  声帯はご存知のとおり声を出すための器官です。声帯ポリープは声帯の粘膜にできる、炎症性の隆起性腫瘤と考えられています。嗄声[させい](声がかれる)が主症状ですが、のどの違和感や発声時の違和感、息苦しさといった症状が出ることもあります。声を出す職業の人に多く発生します。カラオケ、怒鳴り声、演説など、急激な発声が誘引となって充血がおこり、その後もさらに声帯に激しい機械刺激(物理的な力)が持続的に加わると、粘膜下の血管が破綻し血腫ができ、ポリープを形成するという説が有力です。この他、タバコの煙や、工場の排煙など慢性的な喉頭への刺激も声帯に結節やポリープができる原因となります。
● 検査と診断
  間接喉頭鏡検査や喉頭鏡ファイバースコープ検査で声帯を直接観察することで容易に診断できます。がんと鑑別するため生検(患部の一部を切り取って顕微鏡などで調べる検査)をすることもあります。
  通常は左右1対ある声帯の片側に生じます(これに対し「声帯結節」は、通常は声帯の両側にできる小さなタコです)。声帯の前方3分の1の部分が好発部位です。ストロボスコープを行うと、粘膜波動が観察できるので術中や術後の声帯の判定にも有用です。
● 鑑別疾患
  接触性潰瘍、小結節、ポリープ様声帯、反回神経麻痺、声帯の腫瘤(のう胞、血管腫、乳頭腫、喉頭がん)などがあります。
● 治療と予後
  声帯ポリープができたばかりの時や、小さい結節の場合には、のどの安静だけで自然に消失することもあります。また、消炎剤の内服やステロイドホルモンの吸入で消失することもあります。
  これらの治療法にも反応せず数年も嗄声が続いたり、ポリープが大きい場合には、ポリープを根元から完全に切除します。一般的には入院の上、全身麻酔下で喉頭顕微鏡下手術でポリープを切除します。外来でファイバースコープを用いて摘出することもありますが、術後は声帯の安静のために1週間程度の沈黙期間を要します。
  声帯ポリープ自体は悪性化しませんが、まれにポリープのような外観のがんもあるので、病理組織検査で悪性化の有無をチェックします。切除後も声の出し方などに注意しないと再発する恐れがあります。
● ご契約をいただく際には
  良性のポリープと確証できれば、切除後は医療保険に関しては、一定期間の部位不担保での加入ができるでしょう。治療期間、治療方法、手術の有無について告知をいただいてください。治療内容によっては病理組織記載の診断書の提出が必要な場合もあります。喉頭の摘出手術をしている場合は、悪性疾患の可能性が高くなるので引受延期となる可能性が高いです。
  何回も再発している場合や、良性の確証のないものは、死亡保険についても引受延期や、削減等の条件での加入となる場合があるでしょう。
  
上田 香十里(かんだ・かとり)
株式会社査定コンサルティング代表取締役
現在、複数の保険専門紙・メディアにて保険医学や告知書の正しい書き方に関する記事を執筆中。近著に「知っておきたい!保険と病気と告知のはなし」(小社刊)、「よくみえる! 医療・先進医療・介護のはなし」(小社刊・共著)がある。また、関連するセミナーを開催、講師としても活躍中。保険会社各社の引受査定支援業務、支払査定支援業務、支払検証、診断書翻訳、関連セミナーなどを行っている。日本アンダーライティング協会会員。日本保険医学会賛助会員。一般財団法人大妻コタカ記念会理事。
http://www.hokensatei.com/
  
2011.12.12
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