>  今週のトピックス >  No.2350
復興財源確保法が11月30日に成立
● 復興特別所得税は25年間、年2.1%賦課
  東日本大震災の復興財源を確保する法律や2011年度税制改正の積み残し部分を盛り込んだ所得税法等一部改正法など、2011年度第3次補正予算の関連5法が、11月30日の参院本会議で可決・成立した。
  震災復興財源確保法(東日本大震災からの復興のための施策を実現するために必要な財源の確保に関する特別措置法)では、復興特別法人税が2012年4月から3年間、年税額の10%を上乗せ、復興特別所得税が2013年1月から25年間、年2.1%を賦課、また、地方税の個人住民税均等割りが2014年6月から10年間、年1,000円上乗せされる。当初検討されていた復興特別たばこ税に係る規定は法案から削除されている。
● 法人税の実効税率は5%引下げ
  2011年度税制改正の積み残し部分を盛り込んだ所得税法等の一部改正法では、法人の実効税率の5%引下げ、減価償却の見直しや欠損金繰越控除の見直しなど課税ベースの拡大、中小法人の軽減税率の引下げ(18%→15%)、中小企業関係租税特別措置の見直しなどがある(関連記事:今週のトピックスNo.2348参照)。
  地方税関係では、国税の法人税の税率引下げにより、また、個人所得課税関係でも国税の所得税の改正が削除されたことに伴い自動的に影響する。しかし、個人住民税における退職所得の10%税額控除の廃止については、施行期日の修正(2012年1月1日→2013年1月1日)により実施される。
● 所得控除や相続税の見直しは見送り
  法人税は国税と地方税を合わせた実効税率は5%下げたうえで、2012年4月から3年間に限り、年税額の10%が復興特別法人税として上乗せされることになるわけだ。
  一方で、当初2011年度税制改正では、個人所得課税における給与所得控除や特定支出控除の見直しなど、また、資産課税では、相続税の基礎控除の引下げや税率構造の見直し、贈与税率構造の緩和や相続時精算課税の対象拡大などが盛り込まれていたが、これらの改正項目は、今回は見送られ、今後の税制改正等のなかで改めて議論されることとなっている。
● 年収500万円の夫婦子2人世帯の復興所得税は年間1,600円
  なお、復興財源確保法は、当初の案が修正され、復興特別所得税の課税対象期間が2013年から25年間に改められるとともに、復興特別所得税の税率が4%から2.1%に引き下げられている。
  これによる年間の税負担額の試算が明らかになった。例えば夫婦子2人(1人は特定扶養親族、1人は16歳未満)の世帯で試算すると下表のようになる。
  
給与収入 所得税額(付加税額)
300万円
1万1,500円 (200円)
400万円
4万3,500円 (900円)
500万円
7万8,500円 (1,600円)
600万円
12万9,500円 (2,700円)
700万円
20万3,500円 (4,300円)
800万円
33万4,500円 (7,,000円)
900万円
49万4,500円 (1万400円)
1,000万円
66万6,500円 (1万4,000円)
2,000万円
333万8,100円 (7万100円)
3,000万円
691万2,000円 (14万5,200円)
5,000万円
1,451万2,000円 (30万4,800円)
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2011.12.12
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