>  今週のトピックス >  No.2353
日本国債が暴落しないワケ
● 長期金利1%割れ
  10年物国債の利回り(長期金利)が再び低下している。金利が低下しているということは国債が買われていることを意味する。日本の国家財政が危ういため、ギリシャなどの南欧諸国同様、将来的に国債価格が暴落するという人がいるが、本当にそうであろうか。足元の金利低下と合わせて検証してみよう。
  長期金利は12月13日に一時、2週間半ぶりに1%を割り込んだ。7月の時点で1.2%手前だったことを考えれば、日本国債が売り込まれているという状況には程遠い。つまり、日本国債は市場から依然として「安全な資産」とみられているのだ。
● ドイツの札割れがきっかけ
  実は長期金利は11月下旬に1.1%付近まで上昇したが、そのきっかけとなったのが、ドイツ国債の「札割れ」だ。国債の発行はまず、政府が入札をかけ、金融機関などの入札参加者が応札する仕組みになっている。札割れとは募集額に入札額が届かないことを指す。ドイツではよくあることだが、11月23日の入札では60億ユーロの募集に対して応募はその3分の2と極端に少なく、市場にショックが走った。
 欧州で金融危機が発生し、ギリシャをはじめとする南欧諸国だけでなく、大国イタリアやフランスの国債までもが売り込まれている。一方でドイツ国内の経済は堅調で、ドイツ国債は米国債や日本国債同様に超が付く安全資産とみられ、長期金利も2%台と歴史的な水準に低下していた。しかし、ドイツ国債の入札で異例な規模の札割れが発生。巨額の財政赤字を抱える日本国債にも疑いの目が向けられたわけだ。
 日本国債はかなり高値で取引されていることもあり、利益確定の売りが先行した、というのが金利上昇の真相のようだ。一時1.1%付近まで上昇した長期金利はまた下落しており、日本国債はそう簡単には売られることはなさそうだ。
● 国債売りより景気回復が先
  なぜ、南欧諸国の国債が売られるのに、巨額の財政赤字を抱える日本国債は売られないのであろうか。それはユーロの財政が統合されていないことと関わりがある。ユーロ圏は通貨が統合しているものの財政はバラバラで、それぞれの国が国債を発行し、ユーロを調達している。市場にはギリシャの国債もあれば、スペイン国債もあるし、もちろんドイツ国債もある。経済・金融が危機的な状況になれば、ギリシャ国内の投資家も、信頼できない自国の国債を売って、信頼できる国の国債を買いたい。だから、ギリシャ国債が際限なく売られてしまう。
 一方、日本の場合、国内の投資家にとって、為替リスクのない国債は日本国債しかない。日本国債に信頼がなくても、他に選択肢はないわけだ。日本は経済が低迷しているため、国内の投資先が乏しく、機関投資家は黙って国債を買うしかない。だから、世界経済が復調して、国内外に様々な投資先が出てきた時にこそ、日本国債の売りが始まるであろう。それはまだ当分先の話だ。
(内容は12月13日執筆時点のものです)
2011.12.19
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