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平成24年度税制改正大綱を発表、中身は小粒
● 研究開発税制や中小企業投資促進税制を2年延長
  政府は12月10日、平成24(2012)年度税制改正大綱を臨時閣議で決定・公表したが、来年度改正は、消費税率の引上げなど税制抜本改革の本格的審議を控えるだけに、全体として小粒な内容となった。
  法人課税では、研究開発税制の上乗せ特例の継続、再生可能エネルギー投資を加速させるための環境関連投資促進税制の拡充、また、雇用の大半を担う中小企業を引き続き支援するため、中小企業投資促進税制の拡充・延長等を行う。
  研究開発税制は、試験研究費に係る税額控除又は平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除を選択適用できる制度の適用期限を2年延長する。環境関連投資促進税制は、対象資産のうち太陽光発電設備や風力発電設備を一定の規模以上のものに限定した上で、2012年4月1日から2013年3月31日までの間にその設備を取得し事業に使用した場合は、普通償却限度額との合計で取得価額まで特別償却できることになる。
  中小企業投資促進税制は、対象資産に製品の品質管理の向上に資する試験機器等を追加するとともに、デジタル複合機の範囲の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。そのほか、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例を2年延長、交際費等の損金不算入制度について、その適用期限を2年延長するとともに、中小法人に係る損金算入の特例の適用期限を2年延長する。
● 給与所得控除は上限を設定
  個人所得課税では、2011年度税制改正で積み残しとなっていた給与所得控除や退職所得課税の見直しが盛り込まれた。給与所得控除は、その年中の給与等の収入金額が1500万円を超える場合には245万円の上限が設けられる。退職所得課税は、勤務年数5年以内の法人役員等の退職所得について、累進緩和措置の2分の1課税を廃止する。これらの見直しは、個人住民税にも反映されることになる。
  国際課税では、国際的租税回避を防止する観点から、国外財産調書制度を創設し、その年の12月31日において合計5,000万円を超える国外財産を有する居住者は、その財産の種類、数量、価額その他必要な事項を記載した調書を、翌年3月31日までに、税務署長に提出することが義務付けられる。また、所得金額に比べ過大な利子を関連者間で支払うことを通じた租税回避を防止するため、過大支払利子税制を創設する。
● 自動車取得税廃止は見送り〜地方税
  地方税関係では、焦点となっていた自動車関係2税のうち、自動車取得税の廃止は見送りとなった。そのほか、地方税関係では固定資産税の価格の据置特例を段階的に縮小し、2014年度に全廃することが盛り込まれた。
  大綱はその「基本的考え方」で、地方税について全国画一的な現行制度に「地域決定型地方税制特例措置」(わがまち特例)を導入することや税負担軽減措置の見直しを行うこと、また昨年に引き続いて自治体の「自主的な判断」と「執行の責任」を拡大する理念を掲げ、成案を得たものから速やかに実施するとした。
  自動車取得税以外の個別税目では、個人住民税について給与所得控除と退職所得課税の見直しを所得税に連動させて行うことになった。
  固定資産税ではバブル期以降の社会動向や地価の状況などから政策税制措置、負担調整措置を見直して住宅用地の据置特例を廃止するとした。ただし、国民の負担感に配慮して負担水準90%以上の住宅地は2013年度まで継続する。同税では、わがまち特例に関連して課税標準の特例措置2件を条例決定事項にすることも盛り込んだ。
  また、復興税制としては、避難等の措置が解除されていない区域内の土地・家屋にかかる課税免除措置を2013年度以降も継続することが決まった。

資料:平成24年度税制改正大綱↓
http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/24taikou_2.pdf
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2011.12.19
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