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翼状片[よくじょうへん]」告知における留意点
  翼状片[よくじょうへん]とは、白目(強膜)の表面を覆っている結膜組織が血管を伴って目頭(鼻側)の方から、次第に黒目(角膜)の方に文字通り三角形の翼のかたちに伸びてくる病気です。
  高齢者に多く、長年にわたって紫外線やホコリ等へさらされたことにより結膜組織が異常に増殖することが原因と考えられています。
● 症状
  眼の表面に凹凸ができ血管を伴っているので、充血や異物感などの症状や視力低下、乱視が起きます。初めて発症した場合は非常にゆっくりと進行し、角膜に侵入するまでに10年以上かかることもあります。
  この間に、乱視や視力低下が進行し、瞳孔を完全に覆ってしまうと視力が失われてしまい、回復が難しくなる場合があるためその前に手術をします。
● 検査と診断
  視診でもわかりますが、細隙灯[さいげんとう]顕微鏡による検査で容易に診断できます。鑑別疾患として、目の外傷、熱傷、角膜潰瘍の回復過程で翼状片に似た症状が出現することがあり、偽翼状片と呼ばれます(治療は翼状片に準じます)。
● 治療
  症状がなければ放置しても問題ありませんが、充血や異物感の軽減にはステロイド等の点眼剤を使用することもあります。しかし、進行を抑える効果はないので、ある程度進行したものは手術で切除するしかありません。角膜への侵入の程度と、視機能低下などから手術する時期を決めます。
  しかし単に切除しただけでは再発率がかなり高くなります。除去した部分に上方から自分の結膜を引っ張ってきて縫いつける「自己結膜移植術」等の方法では、再発率は数パーセントとかなり低くなります。それでも再発するような重症例には、結膜の異常増殖を抑制するために放射線を当てたり、抗がん剤のマイトマイシンCを点眼したりすることもありますが、正常な角膜や強膜に対する毒性には注意を要します。
● 予後
  直接生命にかかわる疾患ではありませんが、単に切除しただけで何も処置しなければ、数ヵ月以内に再発する確率がかなり高くなります。高齢者に多く発症する病気ですが、再発率については若年者や翼状片が大きいものの方が高いようです。
● ご契約をいただく際には
  生命に関しては問題のない疾患ですが、両目の矯正視力等により、将来、高度障害となる可能性もありますので、特定障害不担保(眼)等の条件付きでの加入となることも考えられます。医療保険に関しては、軽症については問題ないかもしれませんが、重症例や手術後の場合は、術式により再発する可能性も高いので、一定期間は部位不担保や特別障害不担保等の条件付きでの加入となるでしょう。
  
上田 香十里(かんだ・かとり)
株式会社査定コンサルティング代表取締役
現在、複数の保険専門紙・メディアにて保険医学や告知書の正しい書き方に関する記事を執筆中。近著に「知っておきたい!保険と病気と告知のはなし」(小社刊)、「よくみえる! 医療・先進医療・介護のはなし」(小社刊・共著)がある。また、関連するセミナーを開催、講師としても活躍中。保険会社各社の引受査定支援業務、支払査定支援業務、支払検証、診断書翻訳、関連セミナーなどを行っている。日本アンダーライティング協会会員。日本保険医学会賛助会員。一般財団法人大妻コタカ記念会理事。
http://www.hokensatei.com/
  
2012.01.23
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