>  今週のトピックス >  No.2369
米国で株高・債券高のナゾ
●  米経済は改善傾向
  米国の金融市場で株高と債券高が同時進行している。一般に経済環境が好転するとリスク資産である株式が買われ、悪化すると無リスク資産である国債が買われやすくなる。株も債券も同時に買われるということが何を意味しており、今後どうなっていくかを検証してみた。
  この原稿を執筆している1月23日時点で、ニューヨーク市場のダウ工業株30種平均は1万2700ドル台と昨年10月の安値から2000ドル近く上昇している。一方、米国の10年債利回り(長期金利)はほぼ2%ちょうどで、歴史的低水準が継続している。
  米株が買われているのは、経済環境が好転しているからに他ならない。最大のネックだった雇用は12月の失業率が8.5%と前の月より0.2ポイント改善し、2年10カ月ぶりの低水準となった。ほかの経済指標もおおむね改善傾向にあり、米経済は金融危機の後遺症から徐々に立ち直りつつある。
●  ユーロ問題は長期化
  一方、欧州に目を転じるとユーロの債務問題は依然くすぶっている。足元ではユーロが1ユーロ=100円を回復するなど、過度なユーロ売りは和らいでいるが、1月中旬に米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がフランスなどユーロ圏9カ国の国債を格下げ。春にかけてギリシャなどが国債償還を控えており、厳しい環境のなかで大量の資金調達が必要だ。
  ユーロの債務問題は、各国財政の不統合という根の深い問題で、一朝一夕で解決できるものでもなく、今後も長期化するのは間違いない。こうした状況では、最も安全な資産である米国債は手放しにくい。米国の国内経済は改善しているが、ユーロは不安が続くという状況が株高・債券高の同時進行をもたらしていると言える。
●  ポイントは中国経済
  こうした現況を踏まえ、今後1年の国際金融市場はどう展開するであろうか。ポイントは中国経済にあると筆者は考える。
  中国の2011年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)増加率は前年同期比で8.9%と、4四半期連続で鈍化した。以前ほどの勢いがないことは確かである。ただ、今年は秋に胡錦濤国家主席ら最高指導部が交代する共産党大会がある。経済政策運営のスローガンは「穏中求進(安定の中で前進する)」としており、金融緩和などで経済を支えながら、指導部の交代をスムーズに進めたいとの思惑が見える。
  米大統領選を控えるオバマ大統領も、今年は雇用対策などの経済運営を必死でこなすだろう。米・中という2つの経済大国が経済運営を間違えなければ、世界経済は徐々に回復していくというのが筆者のメインシナリオだ。出遅れている日本株も少しずつ見直されるかもしれない。
(内容は1月23日執筆時点のものです)
2012.01.30
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