>  今週のトピックス >  No.2371
税制改正・社会保障一体改革の考え方を再確認しよう
  昨年より議論されている税制改正(政府案)では、平成24年度分に加え、抜本改革となる「社会保障と税の一体改革素案」が発表されている。今回は、政権交代後の税制改正大綱に記載される「考え方の前提」となる前書き部分が、従来に比べて多くなった。確かにこの部分は、当来する少子高齢社会の難題に対して、税金を負担する国民に理解を請う重要部分と思われるが、発表後、国民が確認しているのは個別税目の施行細目がほとんどである。この考え方が「当たり前のこと」として放置されてしまってよいのだろうか?
  「木を見て森を見ず」のような、「木」の使い方に目が向いてしまう従来型の解釈と行動は、果たして難題に対する最終成果をものにできるのか、一抹の不安を感じてしまう。大震災以来、頻繁に使われている「絆」という言葉と重なるように、「支え合う社会」の本来的なあり方とはどのようなものか、もう一度その前提を整理して「森」を確認してみたい。
● 平成22年度税制改正大綱に記載された「検討の5つの視点」
  @ 納税者の立場で「公平・透明・納得」の税制構築
  A 「支え合い」に必要な費用の分担
  B 一体的な税制改革と社会保障制度改革
  C グローバル化へ対応可能な税制
  D 地域主権改革推進税制の構築
  ⇒ これらが政府の税制改正検討のベース(前提)となっている。
● 各年度の主な税制改正の考え方(カッコ内は対応項目) ※一部抜粋
   平成22年度   「控除から手当へ」(扶養控除の見直し⇒子ども手当・高校授業料無償化)
国民の健康維持(たばこ税率の引き上げ)他
   平成23年度   企業の国際競争力強化や雇用・国内投資の拡大(法人実行税率の引下げ等)
「新しい公共」を支える市民公益税制の拡充(認定NPO法人、寄附金制度等)
納税環境の整備(税金支払申告の更正の請求期間延長、税務調査手続の明確化)等
   復興対策   東日本大震災の被災者等の負担軽減、復興取組み推進、復興財源確保(所得税増税等)
  そして現在、以下のような案が議論されている。
平成24年度(案)<テーマ:税制抜本改革への喫緊の対応を要する事項>
           成長戦略に資する措置(エコカー減税・研究開発税制・中小企業投資促進税制・住宅取得のための贈与税非課税措置等の延長 等)
公平性の確保と課税の適正化(国際的整合性配慮、租税特別措置の見直し)
地方税の充実と住民自治の確立に向けた改革(「納税者権利憲章」)等
一体改革素案 <テーマ:安心で希望と誇りが持てる社会の実現を目指して〜抜本改革へ>
           「社会保障機能の強化」「財政の健全化」の同時達成(「消費税」増税)
持続可能な「全世代対応型」社会保障制度の構築(新しい年金制度etc.)
経済成長との好循環〜子育て・医療介護・雇用・年金・貧困格差対策 等〜
(所得税・資産課税(税率構造)を改善し、税制全体の再分配機能回復を図る)
● 新しい社会の誕生(結果としての効果は如何に)
  こうしてみると、社会のあるべき姿となる「『絆』の森」に向けて、新しい制度の構築が順調に積み上げられているように感じる。しかし、施行された新税制によって実現する社会は、目的(前提)に叶うものかどうか検証する必要があるのではないか?
  現在、政府は試算結果の開示を躊躇しているようだが、国民に対しての報告も必要だろう。そして何よりも、この改正が国民のライフイノベーションにどう機能していくのか、政府も国民も一体となって考える時期が来ている。
(記事は平成24年1月31日時点のものです)
2012.02.06
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