>  今週のトピックス >  No.2385
世界同時金融緩和で金融市場はどうなる?
● 日本株が急上昇
  低迷していた日本株が急上昇に転じている。昨年11月下旬に8,100円台を付けた日経平均株価は2月の第3週終値で9,300円台まで回復した。日本銀行が2月14日に追加の金融緩和策を発表し、株高に弾みをつけた格好だ。世界経済に目を転じると、債務危機に苦しむユーロ圏が昨年12月に大型の金融緩和を実施したほか、中国などの新興国でも緩和策を取り始めている。「世界同時金融緩和」は金融市場にどのような影響を与えるのだろうか。
  今回日銀が決めた追加緩和策は、2010年に創設した「資産買入等の基金」を10兆円増額し、65兆円とすることが柱だ。10兆円の増額分は国債の購入に充てる。日銀は基金以外でも国債を買っており、基金も合わせると年間40兆円規模になる。これは来年度の新規国債発行額の44兆円に匹敵する。
  追加緩和策が日本市場に与えた心理的な好影響は3つあった。1つ目は国債を買って市場に資金を供給することで、市場が金余り状態になり、株が上がると市場に思わせたこと。2つ目は財政問題を抱える日本国債を日銀が巨額に買い入れる姿勢を示し、財政危機への懸念が和らいだこと。3つ目は金融緩和で為替市場を円安に誘導し、外国人投資家などに出遅れ感のあった日本株を再評価させたことだ。こうした心理効果が作用して株高に弾みがついた。
● 欧州では危機を回避
  欧州では昨年12月に欧州中央銀行(ECB)が大胆な金融緩和策に乗り出した。これは民間銀行に対し期限3年、供給上限を定めずに、政策金利の1%で資金を貸し出すというものだ。1回目は総額4,890億ユーロ(約50兆円)と事前の予想を上回る規模の応札があった。2回目は2月29日に実施される予定だ。
  債務問題を抱えるユーロ圏では、資金繰りに苦しむ民間銀行が米国のリーマン・ブラザーズのように破たんして大混乱になるとの懸念があったが、「最後の貸し手」である中央銀行が無条件に大量の資金を供給したことで、当面の危機が収まった。日銀やECBのような中央銀行の金融緩和策には、市場の動揺を抑え経済環境を好転させる効果がある。
● インフレやバブルの懸念も
  米国では昨年の「量的緩和第2弾(QE2)」に続くQE3が噂され、中国やインド、ブラジルなど新興大国もすでに金融緩和に舵を切っている。ただ、世界各国の中央銀行が一斉に金融緩和を始めると、市場が一気に金余りとなって経済が過熱し、インフレやバブル経済に陥る危険もある。こうしたリスクを感じながらも、中央銀行の緩和策に頼らざるを得ないというのが、世界経済の現状と言える。
(内容は2月20日執筆時点のものです)
2012.02.27
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