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政府、「社会保障・税一体改革大綱」を閣議決定
● 消費増税の税収の使途は社会保障関係費に充てることを明記
  政府は2月17日、消費税増税を柱とする「社会保障・税一体改革大綱」を閣議決定した。政府・与党は去る1月6日、同一体改革の素案を正式決定し、関連法案の基となる大綱をまとめるにあたって、自民・公明両党に協議を呼びかけていたが、両党が協議に応じないため、結局、素案の内容を一字一句変えないまま大綱として閣議決定した。大綱を基にした消費増税関連法案は、3月中に国会へ提出する方針だ。
  大綱は、社会保障の機能強化・機能維持のため安定した社会保障財源を確保し、同時に財政健全化を進めるため、消費税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%に2段階で引き上げ、併せて税率構造は事務負担などに考慮し単一税率を維持することや、給付付き税額控除制度など再配分に関する総合的施策を導入する、とした。税収の使途についても、年金や医療、介護、少子化対策の社会保障関係費に充てることを明記した。
  また、増税への国民の理解を得るために、政治改革・行政改革に取り組み、議員定数削減や公務員総人件費削減など自ら身を切る改革を実施した上で、税制抜本改革による消費税引上げを実施する考えも示した。具体的には、衆議院議員定数を80削減する法案等を早期に国会に提出し、成立を図るほか、独立行政法人改革、公益法人改革等の行政構造改革に向けた取組みを進め、国家公務員人件費の削減などを実施する。
● 税一体改革で実現しそうな相続税の基礎控除の圧縮
  税制抜本改革においては、消費税率を引き上げる一方、個人所得課税や資産課税等の見直しを通じて高所得層の負担を増やす。個人所得課税では、現行の所得税の税率構造に加え、課税所得5,000万円超について45%に引き上げる。
  資産課税では、相続税の基礎控除について、定額控除を3,000万円(現行5,000万円)、法定相続人比例控除を600万円(現行1,000万円)に法定相続人数を乗じた金額にそれぞれ引き下げる。死亡保険金の相続税の非課税枠についても、現行では法定相続人1人あたり500万円だが、非課税枠を利用できる対象を、法定相続人のうち、未成年者、障害者、相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた者に限定し、同居していない法定相続人は除外する。
  相続税の税率構造については、最高税率を現行の「3億円超で50%」から「6億円超で55%」に引き上げ、税率区分を現行の6段階から8段階にする。こうした見直しに伴い、未成年者控除(現行:20歳までの1年につき6万円)及び障害者控除(同:85歳までの1年につき6万円)については、ともに控除額を10万円に引き上げる。
  これらの改正は、2015年1月1日以後の相続・遺贈により取得する財産に係る相続税について適用される。
● 贈与税は税率構造を緩和
  一方、贈与税については、若年世代への早期資産移転をより一層促進するため、20歳以上の子や孫への贈与を対象に税率構造を緩和する。最高税率は4,500万円超で55%(現行1,000万円超で50%)に引き上げるが、税率区分を現行の6段階から8段階にし、3,000万円以下の贈与は税率が引き下げられる(200万円以下は同じ)。それ以外の贈与を対象とした税率構造も、税率区分が8段階となり、1,000万円を超える贈与が細分化される。
  さらに、親子間の生前贈与を促す相続時精算課税制度についても、(1)受贈者の範囲に、20歳以上の孫(現行:推定相続人のみ)を加え、(2)贈与者の年齢要件を60歳以上(同:65歳以上)に引き下げるなど、適用要件を拡充する。
  これらの贈与税の税率構造や相続時精算課税制度の適用要件の見直しは、2015年1月1日以後の贈与により取得する財産に係る贈与税について適用されることになっている。

資料:社会保障・税一体改革大綱について
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/kakugikettei/240217kettei.pdf
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2012.02.27
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