>  今週のトピックス >  No.2387
高齢者も安心して住める「サービス付き高齢者向け住宅」とは?
  国土交通省と厚生労働省が共同で所管する「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」が、2011年(平成23年)4月に改正され、同年10月より新しく「サービス付き高齢者向け住宅」の登録制度がスタートしました。最近の新聞報道によれば、新制度発足後、大手建設会社等の参入が相次いでいるようです。今回はこの制度はどのようなものなのかをみていきたいと思います。
  「サービス付き高齢者向け住宅」とは、同法の改正により10月より登録が開始された高齢者向けの賃貸住宅のことです。借主が60歳以上であれば要介護度にかかわらず入居することができ、家主からの立ち退き要求などの心配をすることなく一生涯にわたって住み続けることができることになっています。これまで、「高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)」、「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」、「高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)」などに制度が分かれていましたが、「サービス付き高齢者向け住宅」に一本化され、利用者にとってもわかりやすい制度となりました。
  今回の改正にいたる背景としては、高齢の単身者や夫婦のみの世帯が増加しているなか、いざというときに医療や介護への連携がとりやすい住まいを確保するため、諸外国と比較しても遅れている高齢者向け住宅の供給をより充実する必要性が高まっていることが挙げられます。
*高齢者単身・夫婦世帯数、全高齢者に対する介護施設・高齢者住宅等の割合とも国土交通省資料より抜粋
「サービス付き高齢者向け住宅」の登録制度及び供給促進に対する支援策は次のとおりです。
<登録制度の概要>
  事業者は、下記の登録基準等を含む所定の条件を満たす物件について、都道府県知事などに登録します。なお、今回の改正により、基準を満たす有料老人ホームについても登録することができるようになりました。
「サービス付き高齢者向け住宅」の登録基準
〔規模・設備〕
  ・ 部屋の広さ(床面積)は、原則25u以上(ただし、居間、食堂などが共用施設として十分確保されている場合は18u以上)
  ・ 各部屋に台所、水洗便所、浴室・洗面設備等一定の設備があること(ただし、共用施設として十分に利用できる環境である場合も可)
  ・ バリアフリー構造であること(段差のない床、手すり、廊下幅の確保等)
〔サービスの提供〕
  ・ ケアの専門家による安否確認サービスと生活相談サービスが必須。その他、食事の提供や清掃・洗濯等の家事援助等
  *ケアの専門家とは、社会福祉法人や医療法人等の職員、医師、看護師、介護福祉士、ホームヘルパー1・2級資格者等のことです。
〔契約内容〕
  ・ 高齢者の居住の安定が図られた契約であること(事業者の都合で一方的に解約できない等)
  ・ 前払家賃等の返還ルールおよび保全措置が講じられていること
<高齢者向け賃貸住宅の供給促進のための支援策>
1.建築費等の補助
  「サービス付き高齢者向け住宅」の登録を受けた民間事業者・社会福祉法人・NPO等は、「サービス付き高齢者向け住宅」の建築・改修費に対して国から補助を受けることができます。
2.税制上の優遇措置
  2013年(平成25年)3月31日までの間に「サービス付高齢者向け住宅」を新築または取得した場合、所得税・法人税の割増償却、固定資産税の減額、不動産取得税の軽減措置が適用されます。
3.建築費等の融資
  「サービス付き高齢者向け住宅」の登録を受ける賃貸住宅の建設資金や改修資金および中古住宅の購入資金について、独立行政法人住宅金融支援機構による融資が受けられます。また、「サービス付き高齢者向け住宅」の家賃の前払金については、民間金融機関のリバースモーゲージ (死亡時一括償還型融資)が、新たに同機構の住宅融資保険の対象となっています。

  このように、高齢者が安心して「終の棲家」を確保できる環境が整備されることは、老齢期を迎えた利用者にとって、住む場所の選択肢が広がるという意味で歓迎すべきことです。また、最近急増している高齢者の孤独死に対する解決策のひとつとしても期待できるところです。一方、国や自治体にとっては、「サービス付き高齢者向け住宅」が増加することで、その地域に介護認定を受ける老人が増えることによる介護費用の負担増という問題や、年数を経て要介護度が上がったときの対応などについては事業者がどのようにサービスの質を確保するかといったソフト面の懸念もあるため、官民一体となった取り組みが必要といえるでしょう。
2012.03.05
前のページにもどる
ページトップへ