>  今週のトピックス >  No.2388
個人事業主の消費税申告における注意点
● 意外に誤りやすい納税義務の判定
  個人事業主の確定申告は所得税だけではなく、納税義務が発生している場合には、消費税の確定申告もしなければならない。個人事業主の消費税には、法人とは少し異なる点があるため、申告には注意が必要である。
  まず、最初に消費税の納税義務があるかどうかを判断しなければならない。消費税は、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば、納税義務が発生する。基準期間は2年前となるため、平成23年分申告における基準期間は平成21年となる。
  基準期間における課税売上高を計算する際には、基準期間の途中から事業を開始している場合でも、個人の場合には年換算をしない。これは、法人の場合とは取扱いが異なるため、注意していただきたい。
  また、個人の場合は課税売上高が毎年1,000万円前後で推移し、課税事業者と免税事業者の間を行ったり来たりすることも珍しくない。この場合、注意すべき点は2つある。
  1つは、課税売上高における税込、税抜の判断である。基準期間が課税事業者なら、課税売上高は「税抜1,000万円」、つまり「税込1,050万円」が事業者免税点となる。逆に、基準期間が免税事業者なら、「税込1,000万円」が事業者免税点となる。
  もう1つは、課税事業者から免税事業者、免税事業者から課税事業者に移行する場合の、消費税の調整規定である。詳細は割愛するが、棚卸資産がある場合には、棚卸資産に係る消費税を別途調整しなければならないため、前後の課税期間の納税義務を確認する必要がある。
● 事業を再開した場合の届出関係に注意
  納税義務以外に、基本的な届出関係も必ず確認しておきたい。これは個人に限ったことではないが、課税事業者や簡易課税の選択の有無を確認しておかないと、そもそも根本的に計算が違ってくることにもなりかねない。特に、過去にいったん廃業した経緯があり、その後に別事業で開業した場合などには、過去に提出した届出が継続されており、現在も有効な場合がある。例えば、過去に簡易課税選択届出が出ていれば、その後新たに開業する際にいくら多額の設備投資等があったとしても、消費税は還付されない。
● 今後は、免税点制度の改正が影響
  平成23年分の確定申告には影響しないが、消費税の免税点制度については既に、税制改正が決定している。個人事業主の場合、平成25年分以後については、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても特定期間(個人事業者の場合は、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間)の課税売上高が1,000万円を超えると、課税事業者となる。ただし、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできる。
  場合によっては、平成24年1月1日から6月30日までの期間の課税売上高が平成25年分消費税の納税義務に影響するケースも出てくるため、今後のタックスプランニング等には注意が必要である。
  
村田 直(むらた・ただし)
マネーコンシェルジュ税理士法人
税理士
大阪府茨木市出身。大学卒業後、会計事務所勤務を経て現法人へ。平成22年3月税理士登録。法人成り支援や節税対策・赤字対策など、中小企業経営者の参謀役を目指し、活動中。年に数回の小冊子発行など、事務所全体で執筆活動にも力を入れている。
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◎私たちは「経営者へのお役立ち度★世界一」の税理士事務所を目指します!
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2012.03.05
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