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がんの「陽子線治療」と「重粒子線治療」が健康保険の対象に?!
●  陽子線治療と重粒子線治療
  切らずに治すがん治療といえば放射線治療が代表格ですが、従来の放射線治療より高い治療効果があり体への負担が少ない治療法として広まりつつあるのが、「粒子線治療」です。粒子線治療には、「陽子線治療」と「重粒子線治療」がありますが、どちらも高額な治療代がネックとなっています。
  現在、「先進医療」の対象である陽子線治療や重粒子線治療を受けたときの費用については、「先進医療に係る費用」は、患者が全額自己負担し、「先進医療に係る費用」以外の、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われます。患者は一般の保険診療の場合と比べて、「先進医療に係る費用」を多く負担することになります。
  その陽子線治療や重粒子線治療が、近い将来、健康保険の対象になるかもしれません。
●  先進医療の保険導入
  現在、先進医療は、厚生労働大臣が定める「評価療養」の1つとされ、保険診療との併用が認められています。ただし、将来的な保険導入のための評価を行うものとして、保険診療との併用を認めたものであり、実施している保険医療機関から定期的に報告を求めることとしています。
  先進医療を保険導入するかどうかの検討の順序は、まず一次評価として、各技術について構成員3名による評価(書面審査)が行われます。次に、二次評価として、一次評価の結果を先進医療専門家会議に報告し、一次評価の結果に基づき、全技術についての検討を行い、保険導入等について先進医療専門家会議の評価を取りまとめます。その後、先進医療専門家会議における最終的な評価を中央社会保険医療協議会(中医協)総会に報告し、検討が行われます。
●  平成24年度診療報酬改定に向けた検討
  平成24年度診療報酬改定に向けた、「平成23年度 先進医療の保険導入等に係る評価」の一次評価の結果として、陽子線治療と重粒子線治療が、ともに「総合B1」の評価となりました。一次評価時の評価の定義において総合B1とは、「3名の評価者の評価において、主担当と副担当の意見が分かれており、主担当がA又はB評価である技術」となっています。前回の平成22年度診療報酬改定時の一次評価の結果は、両者とも総合Cの評価でしたので、保険導入へワンランクアップした形になります。
  しかし、その後の先進医療専門家会議において、陽子線治療と重粒子線治療については、保険導入の適否を評価するために必要な有効性、効率性等が十分に示されていないことから「先進医療で実施されることが適当と考える」と中医協総会に報告され、保険導入が見送られました。
  健康保険の対象となれば、患者は一部自己負担(3割など)で済み、経済的負担を抑えることができます。費用対効果や普及性などの課題が解決されれば、近い将来、早ければ次回の診療報酬改定時にも、陽子線治療や重粒子線治療が健康保険の対象になるかもしれません。
<参考>  先進医療の保険導入等に係る評価
一次評価時の評価の定義
A評価:優先的に保険導入が妥当
B評価:保険導入が妥当
C評価:先進医療として継続することが妥当
D評価:廃止することが妥当
2012.03.19
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