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生命保険を活用した決算対策のポイント
● 生命保険決算対策の4つのポイント
  今月は3月決算法人の決算期末となるため、決算対策に頭を悩ませているところもあるだろう。決算対策には様々な手法があるが、今回は特に生命保険を活用した対策を取り上げる。
  生命保険を活用した対策を検討する際に、重要なポイントが4つある。
  1つ目は、出口戦略をしっかり考えておくことである。生命保険を使った対策といっても、実態はあくまで利益の先送りに過ぎない。生命保険料を支払った時に支払保険料を損金算入できる場合は、税額軽減の要素の一つとなるが、いずれ解約や満期により収入が計上されることになる。そのときに何の備えもしていなければ、結果的にその時点で課税されることになる。役員退職金に充当するなど、加入の段階で出口対策はあらかじめ考えておきたい。
  2つ目は、解約リスクを考慮することである。生命保険は当然ながら、ある程度の長期に渡って保険料を支払い続けることが前提となる。しかし、法人には様々なリスクがつきまとう。不測の事態により、どうしても保険を継続できない場合を考え、万が一早期に解約したとしても、大幅に損をしないような商品選びが重要である。
  3つ目は、複数の保険会社を比較することである。生命保険の種類によっては、同種の商品を各保険会社で比較した場合、保険料や解約返戻率などの条件で差が付くことがある。1社だけの商品を検討するのではなく、できれば複数の保険会社の商品を比較することが望ましい。
  4つ目は、分散加入である。1つ目の出口戦略とも関係するが、保険会社や保険金額を分散して加入しておくと、いざというときの選択肢が増え、機動的な対応が可能となる。
● 「新規加入」か「既存保険の活用」の2種類
  生命保険を活用した決算対策は、大きく2つに分かれる。生命保険に新規加入するか、既に加入している生命保険を活用するか、のいずれかである。
  新規加入する場合には、まずは公的制度を利用することを優先的に考えたい。具体的には、中小企業倒産防止共済への加入が有効である。倒産防止共済は、本来は掛金を積み立てておくことで、取引先の倒産時に一定額を限度に、資金の貸付けが受けられる制度である。しかし、掛金の全額が損金計上でき、40ヵ月以上加入すると解約返戻率が100%になるという特徴があるため、決算対策目的にも十分合致する商品である。昨年の改正により、年間最大240万円の掛金を支払うことも可能となった。まだ加入していなければ、まず最初に検討することをお勧めしたい。
  次に検討するのが、民間の生命保険である。現在は、がん保険(注)や長期平準定期保険、逓増定期保険などが多く利用されている。
  既に加入している生命保険を活用する場合、有効なのは支払方法の変更である。月払の生命保険を決算期末で年払に変更すると、その時点までに支払った月払保険料に加えて、1年分の年払保険料を経費計上することができる(損金算入割合は、各保険種類の取扱いによる)。
  また、終身保険に加入している場合には、払済処理することで、資産計上額と解約返戻金の差額について、損失計上することができる。
(注)がん保険は現在全額損金の取扱いとなっているが、国税庁が通達改正に向けてパブリックコメントを募集している(3月29日まで)。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000084894
  
村田 直(むらた・ただし)
マネーコンシェルジュ税理士法人
税理士
大阪府茨木市出身。大学卒業後、会計事務所勤務を経て現法人へ。平成22年3月税理士登録。法人成り支援や節税対策・赤字対策など、中小企業経営者の参謀役を目指し、活動中。年に数回の小冊子発行など、事務所全体で執筆活動にも力を入れている。
マネーコンシェルジュ税理士法人
◎私たちは「経営者へのお役立ち度★世界一」の税理士事務所を目指します!
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2012.03.19
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