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見直される法人契約がん保険の取扱い
● 現在は支払保険料の全額が損金算入可能
  法人契約の「がん保険(終身保障タイプ)」は、会社を契約者及び保険金受取人、役員や従業員を被保険者とする契約で、一定の要件をクリアーすることで支払保険料の全額損金算入が認められるというものである。
  がん保険では、保険期間の前半において支払う保険料の中に前払保険料が含まれているが、かつては保険料に含まれる前払保険料の割合が低率で、かつ、保険期間の終了に際して支払う保険金がないことから、平成13年の通達により、終身払込の場合にはその支払の都度損金の額に算入、有期払込の場合には保険期間の経過に応じて損金の額に算入する取扱いが定められた。
  しかし、以後10年が経過し、保険会社各社の商品設計の多様化等により、がん保険の保険料に含まれる前払保険料の割合や解約返戻金の割合にも変化がみられることから、その実態に応じて取扱いの見直しを行うことになった。
● 「2分の1損金算入」に縮減
  具体的には、現行通達のがん保険に係る取扱いを廃止した上で、新たに「法人が支払う『がん保険』(終身保障タイプ)の保険料の取扱いについて」とする法令解釈通達が出される見込みである。新通達では、法人が「がん保険」に加入してその保険料を支払った場合の保険料の税務を、終身払込、有期払込といった払込期間の区分等に応じて定めている。
  例えば有期払込(一時払含む)の場合、前払期間のうち保険料払込期間が終了するまでは、当期分保険料の2分の1相当額と当期分保険料を超える金額を前払金等として資産計上し、残額は損金算入する。保険料払込期間の終了後は、当期分保険料の2分の1相当金額を資産計上額から取り崩して損金算入する。
  つまり、これまでの最大のメリットである「全額損金算入」という取扱いが「2分の1損金算入」に縮減されるわけだ。
● 現行の取扱いが認められる既契約分の保険料
  現在、国税庁のホームページに新通達の改正案が示され、3月29日まで意見が募集されている。期間経過後、通達が改正され、取扱いが見直されるものとみられている。
  そこで注目されるのは、通達改正前に行われた既契約分の保険料の取扱いである。通達改正案と同時に示された概要には「平成○年○月○日以後の契約に係るがん保険の保険料について適用」とされている。日付が入っていないが、ここで「以後の契約」とされていることから、新通達は適用開始日以降に締結された契約からの適用で、既契約への適用はないことが読み取れる。
参考資料:「法人契約の『がん保険(終身保障タイプ)・医療保険(終身保障タイプ)』の保険料の取扱いについて」の一部改正(案)等に対する意見公募手続の実施について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=410240007&Mode=0
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2012.03.19
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