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インターネットのUG(アンダーグラウンド)  ウィルス/ワーム
ウィルスの届出件数
件数
96 755  
97 2,391  
98 2,035  
99 3,645  
00 11,109  
01 24,261  

  インターネットのセキュリティー面で大きな問題は、なんといってもウィルスやワームだ。ウィルスの届出件数はインターネット・ユーザーの増加に伴い、IPA(情報処理振興事業協会)の統計を見てもこの1、2年で急激に増えている。(http://www.ipa.go.jp)

  そんな中、昨年ユニークな電子メール・ワームがあった。感染したコンピューターの中に児童ポルノの画像ファイルがないか探索し、もし不審なファイルが見つかれば当局にそのことを警告するというもの。

  この『ノープト(Noped)』と呼ばれるワームは、暗号化されたVisual Basic Script(VBS)コードで、電子メールの添付ファイルに埋め込まれている。「FWD: Help us all to end illegal child porn now」(違法な児童ポルノの即時撲滅にご協力を)という件名の電子メールで、添付ファイルとして届く。アウトルック・エクスプレスを使用しているユーザーがこのファイルを開いてしまうと、感染したシステムのアクセス可能な全てのハードディスク内に、児童ポルノ画像であることを示すような名前のJPEGファイルがないかどうかを探す。スクリプト内にリストされているファイル名に一致するJPEGファイルを発見すると、所有者の電子メールアドレスと併せて、政府機関や警察宛てに通報メールを送付する。このウイルスが含まれている添付ファイルの名称は「END ILLEGAL child porn NOW.TXT...vbs」。同ウイルスはまた、児童ポルノに関する国際法とするものを詳しく述べた長いドキュメントを表示する。そして他の多くのワーム同様に、感染したアウトルックのアドレス帳に載っているすべての電子メールアドレスに自分自身のコピーを送信する。

  ノープトは、インターネット浄化を目指す英国のハッカーによってリリースされたといわれている。危険度が低いこともあり、非合法ながら一種の社会奉仕とも善玉ウィルスとも評されたが、アクセスが集中してサーバーがダウンしてしまうこともありうるのでやはり困りモノ。

  このワームが児童ポルノと判定する際の基準も問題となる。具体的にどのような基準を使っているのかよくわからない。もし、なんでもない画像ファイルにたまたまポルノのファイルと同じ名前が付いていた場合、ワームはその画像ファイルの持ち主を児童ポルノの所有者と判断し、間違った警告メールが当局に殺到するかもしれないと懸念されている。

  このタイプのワームは、ソフトの違法コピーの通報や思想チェックに応用されていく可能性もあるだろう。問題はその基準が、多くの検索メカニズムが使用しているものと同様なら、全く関係のない多くのファイルがクロと判定される恐れがあるということだ。

(フリーライター 志田 和隆)
2002.01.22
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