>  今週のトピックス >  No.353
10兆円に達した個人の外貨建て資産残高
  個人投資家の保有する外貨建て資産が急増している。保有が増加している具体的な商品としては、外貨預金を始め外国株式・外国債券・外貨建てMMF・外国株式や債券に投資する投資信託などである。日銀の資金循環統計によれば2001年9月末に個人が保有している外貨預金残高は、前年比8.4%増の約4兆円に達している。また、外国株式・債券や外貨建て投信などの資産残高においては、前年比46.5%増の6兆5千億円と急速に拡大した。その結果、個人の外貨建て資産残高は2001年9月末時点で10兆円を突破し、過去最高の残高を記録した。2001年の年末にかけての急速な円安進行を考慮すれば、残高はさらに増加しているものと予想される。
  個人の外貨建て資産残高は1995年以降増加の一途をたどっているが、この要因としては次の3つのことが考えられる。
  1. 低金利政策により預金の国内・外金利差発生
  2. 外国為替市場における円安・ドル高基調が続いていること
  3. 2002年1月のユーロ誕生に伴うユーロ建て金融商品への個人の興味拡大
  つまり、それらの複合要因により10兆円もの国内資産が海外へ流出したわけである。
  中でも2.の為替相場に関していえば、2001年12月28日の為替レートは1$=131.95円で、1998年10月以来の円安水準である。特に2001年12月初旬から年末にかけては、短期間で3円50銭以上の円安が進行した。これにより、ボーナスなどの運用商品として外貨預金や外貨MMFが例年以上に注目を集めた。
  これから外貨資産を保有しようと考えるならば、最低限は今年為替相場に影響を与えそうな以下のようなことだけは押さえておくとよい。
2・3月: 企業決算により、日本企業が手持ち外貨の円転による円高要因
4月: ペイオフ解禁に伴う海外資産へのシフトが加速すれば、円安要因
5月: GW中の日本からの海外旅行者の影響で、円売り・ドル買いで円安要因
6月: サッカーワールドカップの影響で、円買い・ドル売りで円高要因
8月: お盆休み中の日本からの海外旅行者の影響で、円売り・ドル買いで円安要因
12月: 年末の日本からの海外旅行者の影響で、円売り・ドル買いで円安要因
  また最近は顧客から外貨資産による運用について、「昨年末の急速な円安進行下において、外貨に投資する魅力は薄れた」という意見も耳にするが、本来為替相場は対外的に経済などの強さが反映された結果であり、現在の日本の経済情勢を米国と比較すれば、今後一層の円安はありえないなどと必ずしもいい切れない(むしろ円安の流れではないか)のである。また、外貨資産の残高が過去最高の10兆円を突破したとはいえ、それでも個人の金融資産融資産1400兆円に占める外貨資産の割合はまだ1%にも満たない。最近、銀行の資産運用相談やマネー誌で遡及されている通貨分散による分散投資効果に関する影響も加味すれば、当分は外貨資産への資産流出が続くのではないだろうか。
2002.01.29
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