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インターネットのUG(アンダーグラウンド)  有害サイトと検閲
  なんでもあり状態のインターネット社会。判断能力が育っていない子供への配慮が何か必要ではないか。ポルノや暴力に対して、映画や雑誌にあるような表現規制や見る側の年齢制限を設けるべきではないか。特に、親や教師の立場からは強い要望としてあるだろう。しかし問題になるのはどういう基準で規制するか、どこで有害とそうでないものの線引きを行うかだ。
  そんな問題提起をするのにちょうど良いケースが「キッズGoo」だ。株式会社NTT-X がGooサービスの一環として始めた子ども用検索ポータル。http://kids.goo.ne.jp/
  ここで検索すると検索結果のサイト、およびそこからリンクをたどる全てのサイトについてフィルタリング(制御)される。禁止語を含んでいたりブラックリストに載っていたりすると、プログラムによりブロックされて表示されない。代わりに下記のような注意書きが出る。
(このページはキッズgooのルールいはんが見つかったためひょうじしないよ)

または、

「ごめんね。ページがひょうじできませんでした。」
  「キッズGoo」の機能説明での「安全の確保」という項目を見ると、「子供が不用意に有害サイトにアクセスしないよう『有害語リスト』や『有害URLリスト』に基づき、検索結果 から不適切なページを排除。『優良URLリスト』を併用することで、実用性を担保しています」とある。
  実際にいくつかのことばを試してみる。「ポルノ」と検索すると、ほとんどが表示されない。しかし一緒に列挙されるモノに混じって、子供たちにも人気があるバンド・グループの「ポルノグラフィテイ」はOK。どうやら「優良URLリスト」に入れられているようだ。
  ところが、普通のサイトも引っ掛かる。「セクハラ」防止を訴えたり、「児童ポルノ」・「買売春」問題に反対するサイトでも、その言葉があるだけで内容に関係なく有害サイト扱いになっている。子どもの権利を主張するNPOや国会議員のサイトでも同様だ。英語も適用されているようで、米国自由人権協会のトップページも表示されない。「Lesbian and Gay Rights」という言葉が駄目らしい。他にも「2ちゃんねる」「出会い系サイト」事件を起こした宗教団体名など、表示されないものが多い。
  さらに気になるのは、上記に関するものだけでなく政治的な分野についてだ。「従軍慰安婦問題」「教科書問題」「南京大虐殺」「盗聴法」「プライバシー侵害」と検索すると表示されないものが多い。通常の「goo」での検索結果と照らし合わせて確認しても、過激とも思えない穏健なサイトまでひっかかる。これを問題視したWEB管理者が「キッズgoo」にクレームを入れ、現在は表示されるようになったケースも少なくない。
  表示されない理由も付されず、ただルール違反と示すだけでは、子供たちに偏見や差別を植え付けないかと懸念される。「言葉狩り」や思想チェックの危険性も含まれる。常に論争・検証が必要だろう。使い方によっては「キッズgoo」は、表現の自由とタブーや検閲を考える教育的なツールとなるのかもしれない。
  「キッズgoo」の利用者は主に小学生を想定してるのだろうが、インターネットに関しては大人顔負けの知識を持つ子供は少なくない。しかも規制されれば余計に見たくなる年頃だ。他の検索サイトを使用し、アドレスをコピペ(コピー&ペースト)し、率先して「有害サイト」を探索する子も出てくるだろう。ちょっと歳上の中学生など未成年者の多くが、すでに出会い系サイトやアンダーグラウンド・サイトに参加している。「キッズgoo」のフィルタリングに満足してるのは、パソコンがあまり得意ではない大人だけかもしれない。
  試しにこの「FPS-NET」を検索したら、見事に表示されなかった。どうやら「アンダーグラウンド」というインデックスにある言葉がひっかかったらしい。あなたの関係するサイトも「有害」とされていませんか。
(フリーライター  志田  和隆)
2002.01.29
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