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自己実現の場としてのNPO(民間非営利組織)Vol.3
〜高まるNGO(非政府組織)への認知度〜
  アフガン復興支援会議でのNGO参加問題では、利権に固執する勢力の姿が浮き彫りになり、多くの国民にとっても時代錯誤と映ったことだろう。NGOに対する一般的評価もここ数年で大きく変わってきた。10年、20年前だったらNGO問題が引き金となり、世論が騒ぎ、国会の審議が止まるという大事には至らなかっただろう。ましてやマスコミが取り上げることすらなかったかもしれない。
   日本でもNGOの必要性が認識され始めたのは、環境問題に政府や企業も取り組みだした1990年代に入ってからといえる。特に、ちょうど10年前の1992年、ブラジル、リオデジャネイロで行われた地球サミットの影響は大きかった。
  政府や産業界にとっても、欧米の国際的NGOの専門性や政治力を大きく評価するきっかけとなり、この年、経団連は環境NGOを支援する自然保護基金を設立した。同じく、日本政府も公害防止事業団を環境事業団と改め、環境保護団体への助成事業をスタートさせた。しかし、日本のNGOへの認知度は相変わらず低いままだった。
  NGO参加者にとっても、地球サミットは大きな分基点となった。多くが参加費自前の無給ボランティアスタッフ。海外のNGO参加者は多くが専従の有給スタッフ。資金の面や専門性においても、マスコミ対策・ロビーイング手法においても力のなさを見せつけられた。経済大国日本のNGOは、第三世界のNGOより弱いと痛感させられた。
  日本のNGOの弱さの原因は何か。それは法制度の問題とNGO内部のマネジメント能力不足だった。法人格が簡単に取得できない、寄付や収益に対して何の税控除もない。この点に関し、市民活動が制度としてほとんど認められない状況は、先進国だけでなく発展途上国と比べても貧しかった。このころ世界的にも有名なグリーンピースやアムネスティが、日本では法人格もないというのは外国人にとっては大変な驚きだったことだろう。
  この危機意識が、1998年末に施行されたNPO法(特定非営利活動促進法)をつくろうという動きとなっていくことになった。
  もう一つの組織運営問題に関しては、日本では「マネジメント」というと、学校や職場での「管理」という否定的なイメージが強かったという文化的背景がある。「特定のリーダーはいない。参加者全員がリーダーだ」という考えの活動家が少なくなかった。理想とは逆に権限や責任の所在があいまいな組織体制の中、リーダーシップやマネジメントの重要性に気付いた者たちが能力強化を目指し、トレーニングやセミナーを始める動きが生まれた。
  現在のNGO参加者で、特に20代30代では、政治的イデオロギーにこだわる人はほとんどいないだろう。単純に人権や環境を守りたいという人が大半だ。企業や行政機関に勤めていても、NGOと関わっていきたいという人たちも多くなった。法制度もまだ不十分で、未熟な組織も多いが、この10年で日本のNGOも着実に力をつけていることは確かだ。
(フリーライター  志田 和隆)
2002.02.12
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