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自己実現の場としてのNPO(民間非営利組織)Vol.4
〜NPOとNGOの違い〜
  アフガニスタン復興支援会議でのNGO参加問題は、その後も大きな波紋を呼び、国会でもNGOの重要性が論議の争点となっている。では、NPOとNGOは、どう違うのだろうか?
   一般にどちらも市民団体やボランティア団体などを指す言葉として、同じような意味で使われているのだが、微妙に違う点もある。厳密な定義があるわけではないが、それぞれの言葉の由来から検証してみよう。
  まず、NGOとは、Non-Governmental Organizationの略で、「非政府組織」と訳されている。この言葉は、民間団体を指すときに使う名称として、国連で使われ始めた。1945年6月に調印された国際連合憲章の第71条に明記されている。
  「経済社会理事会(Economic and Social Council : ECOSOC) は、その権限内にある事項に関係のある民間団体(non-governmental organizations)と協議するために、適当な取り決めを行うことができる。この取り決めは、国際団体(international organizations)との間に、また、必要な場合には、関係のある国際連合加盟国と協議した後に国内団体(national organizations)との間に行うことができる」
  通常国連は、加盟国の政府が中心になって協議されていくが、保健・医療、教育、人権、環境、開発などの社会問題に関しては、民間団体からの協力が欠かせない。現実には、政府より民間団体の方が、より有益な情報や専門技術を有していることが多い。そこで経済社会理事会は、いくつかの民間団体を一定の審査を経て承認し、オブザーバーとして発言の機会を保障することにしてきた。
  そして国連以外の国際会議などでも、NGOは政府以外の民間団体の総称となっていった。国連では慣習的に営利企業をNGOの中には含めていないが、「非政府組織」の範ちゅうは広い。市民団体だけでなく、労働組合、生協、業界団体、宗教団体、経営者団体なども入る。1992年のブラジル・リオでの地球サミットでは、経団連がNGOとして参加して、論議を呼んだこともあった。政府の外郭団体や産業界寄りの団体が含まれることもあり、境界線は微妙だ。そのような団体は、市民団体からは、QUANGO(Quasi NGO : NGOもどき)と呼ばれることもある。
   一方、NPOは、Non-Profit Organizationの略で、「非営利組織」という意味である。 もともと米国の税制度や法人制度からきている。つまり税制上の優遇措置を受けられる「営利企業ではない団体」を指していた。この範ちゅうもまた幅広く、草の根市民団体のほか、学校、病院、博物館、美術館、芸術団体、オーケストラ、スポーツクラブ、労働組合、マンション管理組合、宗教団体など、さまざまだ。しかし一般には、法人格や免税特典の有無に関係なく、「営利を目的としない団体」の総称として使われている。「収益事業をまったく行わない団体」ということではないのは、バックナンバー『自己実現の場としてのNPO(民間非営利組織)Vol.1』(304)で述べた通りだ。
  このように同じ団体でも、行政セクターと区別するときは、NGOとして扱われ、ビジネス・セクターと対比するときは、NPOと呼ばれる程度の違いともいえる。ただニュアンスとして、NGOは政治的、政策的な活動してる団体を主に指し、文化やスポーツ、芸術、医療、教育関連の団体はNPOと使い分ける傾向がある。ちなみにNPOは米用語であり、英国では一般的ではなくcharityという用語が用いられている。
   [参考] 経済社会理事会とは、54のメンバー国により構成され、安全保障理事会(安保理)と並ぶ国連の代表的な理事会の一つである。国際的な経済、社会、文化、教育、保健、人権などの問題に関して、意見交換、調整などをするのが主な活動だ。国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連児童基金(UNICEF)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)など、数多くの機関を設置してきた。
(フリーライター  志田 和隆)
2002.02.12
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