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相次ぐ国債格下げで、日本はどうなる?
●日本国債の格付けがチリや南アフリカと同レベルになる?
  2月14日、米国の格付会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが日本の長期国債の格付けを引き下げの方向で見直すと発表した。ムーディーズは、昨年12月に日本の長期国債の格付けを「Aa2」から「Aa3」に格下げしたばかりだ。現在の格付けはイタリアと同じく、最高位(Aaa)から3番目のランクだが、今後、もし1ランク下がるとバハマやチリと同レベルに、2ランク下がるとイスラエルや南アフリカと同レベルになる。
  先進7カ国(G7)の中では最低の格付けとなり、日本の威信低下を避けることはできないだろう。ムーディーズは、昨年の格下げ時に「景気が一段と悪化したり構造改革がさらに遅れた場合、もう一段階の格下げになる可能性がある」と警告していた。新年を迎えても景気回復の予兆を示すものがなく、政権内で混乱があるなど構造改革の道のりがはっきりしない現状に、しびれを切らしたのかもしれない。
●国債格下げの影響はこんなに大きい
  「国債の格下げなど数字上の問題だ」と、軽く見る向きもあるかもしれない。確かに国債の格付け基準にはあいまいな点もあり、直ちに国の実力を表すものではないが、決して軽視すべきものでもない。もし、国債格下げの報道を受けて国内外の投資家が国債を投げ売りした場合、日本経済に次のような影響が出る可能性があるからだ。
国債が大量に売られることにより円の信用が失墜し、円が暴落する →円安になる →輸入物価が跳ね上がる →インフレになる
日本では10年物の国債が長期金利の代表的な指標となっているため、国債の格下げは長期金利の上昇を引き起こす →国の金利返済額が上昇して国庫が苦しくなる、株安になる、住宅ローンの金利負担が重くなり消費が減少する、などの影響が出る。
銀行は大量の国債を保有しているため、国債が暴落すれば銀行の資本が大きく失われる →金融危機が再燃する恐れがある
海外の機関投資家が日本への投資を敬遠するようになる
●政府は一刻も早く有効なデフレ対策を打ち出すべき
  もしも日本国債が南アフリカと同レベルの格付けになったとした場合でも、実際にこのシナリオ通りになると決まったわけではない。国債の格付けには「自国通貨建て」と「外貨建て」の2種類があり、ここでいっているのは「自国通貨建て」のことである。海外投資家にとって問題となる「外貨建て」の格付けは、2月1日時点で「Aa1」とそれほど悪くはない。
  また、市中に出回っている国債の95%は国内勢が買っているという特殊要因もあり、格付けが落ちたからといって直ちに海外から売りたたかれて、日本経済が混乱するという事態にはなり得ないだろう。だが、じわじわと金利上昇や円安が進み、日本経済にボディブローのように効く可能性は高い。政府は現在、デフレ対策のための本格議論に入っているが、一刻も早く有効な対策を立て世界に示すことが求められる。
  最後に、わたしたちの市民生活のレベルでいうと、ペイオフ解禁を間近に控えているからといって、「安全・確実な国債」に資産の大部分を移すというような行動は、差し控えたほうが賢明だろう。
<参考>ムーディーズの格付けランクの順番
ランク 読み
Aaa トリプル エー
Aa  ダブル エー
A   エー
Baa ビー ダブル エー
Ba  ビー エー
B   ビー
Caa シー ダブル エー
Ca  シー エー
C   シー
(マネーライター  本田 桂子)
2002.02.19
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