>  今週のトピックス >  No.368
有事に強い「金」の魅力とリスク
  4月のペイオフ解禁を控え、個人の間で「金」への人気が急増している。国内での金地金の店頭価格は、1グラム当たり1,361円(税別、2月8日現在)と1年間で30%以上も急騰している。この水準は、1998年8月以来の高さだ。この流れの背景には、今年4月のペイオフ解禁を控えていることや、昨年9月に米国で起きた同時多発テロ事件の影響が挙げられる。
  金価格の急騰は欧米でも同様の傾向がみられ、2月初旬に欧米市場で1トロイオンス(約31グラム)300usドルの大台を突破した。これもまた2年ぶりの高水準である。特に同時多発テロ事件以降、増加の一途をたどっており、金商品の国際広報機関であるワールド・ゴールド・カウンシルによると、2002年1月の取引額は前年比3倍程度まで達している模様である。
  最近注目の「金」の特長をまとめると以下のような点が挙げられる。
(1) 「金」の最大の魅力は、「貨幣や株などと異なり、金そのものが価値を持つため、紙くずにならない」ということである。つまり、経済不安などが起ころうとも、それ自体に価値を持つ「金」を保有することにより、資産の目減りを防ぐ効果がある。これが有事の「金買い」といわれるゆえんである。
(2) 店頭価格は海外市場のドル建て価格に連動しているため、円安になれば店頭価格は上昇し、値上がり益が期待できる。さらに値上がり益は、譲渡所得として総合課税方式による申告納税となるが、その際譲渡所得の特別控除が年間50万円まで認められるため、ほかに譲渡所得がない場合、実質的には売却益は50万円まで非課税になる。(定額口座によって購入した金の売却益は雑所得となる)
(3) 「金」は不動産などと異なり分割が容易な資産であるため、相続発生時の遺産分割にもその効果を発揮する。
(4) 「金」は世界のほとんどの国で自由に売買できるため、換金性に優れた資産である。
(5) 銀行で「金」を購入した際、保護預かりにしている場合はその銀行が破たんしても、保護預りしている「金」は金融機関の破たんの影響を受けることはなく、全額保護される。
(6) 株・債券などとは異なる値動きをする可能性のある資産である。
  このように「金」は、現金・不動産・株などの利点を併せ持った商品ということで注目され、にわかにブームを巻き起こしているといえる。
  しかし、金の購入はすべてがいいことばかりというわけではなく、当然リスクも覚悟しなくてはならない。まず注意しなければならないのは、「金の購入」はあくまで「金へ投資する」ということであり、元本は保証されない。金の価格は、需要と供給で決定されていくため、供給過剰となれば価格は下落する。さらに、店頭価格は海外市場のドル建て価格に連動しているため、円高になれば価格が下落する危険性は大きい。
  また、売却益が譲渡所得として総合課税される場合、購入者の所得によって税率が異なる点にも注意が必要である。年間課税所得が1,800万円超以上の人の場合、譲渡所得に対し所得税37%と住民税13%の最高50%が適用される場合もある。
  だが、さまざまな「金」への投資リスクを覚悟したうえで、資産の一部を「金」へ移し変える動きが目立っているところをみる限り、現在の「金」ブームの人気が衰える気配は感じられない。今後の為替相場やペイオフ解禁の影響いかんによっては、この「金」ブームが一層過熱する可能性も十分あるので、当分の間は金相場に注目する必要があるだろう。
2002.02.26
前のページにもどる
ページトップへ