>  今週のトピックス >  No.374
米国スターバックスに対し消費者団体が抗議
  米国スターバックスコーヒー社は、2月26日に株主総会を行ったが、それに合わせてオーガニック(有機)食品を求める消費者団体や環境保護団体の抗議運動が、1週間(2月23日〜3月2日)続けられた。この抗議運動は全米各地の店舗だけでなく、カナダ、英国、オーストラリア、ニュージーランド、イスラエルなどでも同様に繰り広げられた。今回のような抗議運動はすでに4回目で、「Organic Consumers Association(OCA))や「地球の友USA」などの環境団体は、昨年3月より抗議運動を続けている。
  その要求は主に以下の3点である。まず、遺伝子工学的に作られた牛用成長ホルモン(rBGH)で育てられた乳牛のミルク使用を止めること(rBGHはミルクに残留し、発ガン性を促す疑いがあり、日本を含め米国以外のほとんどの先進国では禁止されている)。2つ目は、コーヒー飲料や菓子・パン類などで、遺伝子組み替え食品(GMO)を排除すること。そして、「フェアトレード(搾取のない公正な取引)」によるコーヒー豆の使用を促進し、労働者の生活を保障することである。
  スターバックスコーヒー社は抗議に対して、昨年声明を発表した。それによると
  1. 中核商品であるコーヒー豆および茶葉には、GMOを使用していない。
  2. rBGHやGMO抜きの食材やオーガニック食品は量的に限られ価格も高いため、代替物の可能性を検討中である。
  3. 要望する客に対しては、オーガニック・ミルクや豆乳をオプションで提供する。
  4. オーガニックの菓子類の販売も一部の店舗で試験的に開始した。
  5. フェアトレードでオーガニックなコーヒー豆を、これまでにも宣伝用として期間限定で販売してきたが、売れ行きが好評だったことから今後18カ月以内に100万ポンド購入したいということ、などである。
  遺伝子組替えコーヒー豆は健康上の問題だけでなく、市場を切り崩し、労働者の仕事を奪う危険性もある。通常コーヒー豆は熟する時期が一定でないため、労働者の手摘みによる収穫が一般的だが、遺伝子操作で熟する時期を同時にすることにより、機械で摘むことが可能になる。また、遺伝子組み替え操作したデカフェ(カフェイン抜き)の品種を使用することにも警告を発する。カフェインが少ない品種は虫がつきやすいため、殺虫剤などの農薬量が増えるのではという不安もある。
  今回の株主総会では、抗議内容を受けて、rBGH、GMOの使用中止もしくは使用の表示することが議案に上り、票決を取ることにしたが、賛成したのはわずか7%にとどまった。
  なぜスターバックスがターゲットになったのだろうか?それは、市場でもまれにみるリーダー企業だからである。これほど短期間で急成長し、世界中にブランドを広めた多国籍企業は少ないだろう。また、社会問題や環境問題にも責任ある企業であると自らが宣伝してきた。現在世界中に5,000以上の店舗を有し、全世界のコーヒーの約1%を販売・消費している。全米コーヒーショップの20%がスターバックスというから、市場や社会への影響が大きな企業と見なされるのは当然だろう。日本でも、現在325店舗を超え、おしゃれな雰囲気が受けて若者を中心に利用者が増している。日本での昨今の表示偽造問題にみられるように、食品を扱う企業の社会的責任は、世界の消費者にとっても大きな関心事となってきている。
(フリーライター  志田 和隆)
2002.03.12
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