>  今週のトピックス >  No.375
低調な滑り出しの個人型確定拠出年金
  加入者自らが運用方法を選択し、その運用成果によって受け取る年金額が変わる新しい制度としてスタートした確定拠出年金。加入者自身が掛金を拠出する「個人型確定拠出年金」の加入申し込み受付が平成14年1月4日から開始された。しかしながら、「個人型確定拠出年金」の運営主体である国民年金基金連合会によると、平成14年1月20日までの申し込みはわずか95人で、それ以降もペースはむしろ鈍っているという。
  確定拠出年金の中でも「個人型確定拠出年金」は、自営業者や既存の企業年金(厚生年金基金・適格退職年金)制度の設けられていない企業の社員などが対象となっているが、「個人型確定拠出年金」の出足が不調な原因として、加入者が負担する手数料が高額なことが挙げられる。確定拠出年金のうち「企業型確定拠出年金」の場合、掛金や運営管理機関などに支払う手数料が企業負担になるケースが多い反面、「個人型確定拠出年金」の場合、手数料はすべて加入者負担となってしまう。
  1年間で約6,000〜7,000円とされる「個人型確定拠出年金」の手数料は、現在の運用環境や、会社員の場合の拠出限度額が年間で18万円に過ぎないことから見れば、決して少なくない金額といえるだろう。また、拠出限度額が年間81万6,000円と比較的多い自営業者の場合でも、限度額が既存の制度である国民年金基金との合算となるうえ、国民年金基金が予定利率4%の確定給付型年金で、手数料の負担もないことから考えると、現状では個人型の確定拠出年金への加入をちゅうちょする気持ちは十分理解できる。
  確定拠出年金は、転職率の増加など人材流動化の流れに対応して、「年金資産にポータビリティ(=持ち運びできること)がある制度」というのが売りである。わが国で確定拠出年金が導入された背景には、既存の確定給付型企業年金の積み立て不足に悩む産業界の強い要望があり、実際「企業型確定拠出年金」は大企業を中心に普及するとみられているが、転職先に企業型の確定拠出年金制度がない場合の受け皿としての「個人型確定拠出年金」が使い勝手の悪いものであれば、ポータビリティも絵に描いたもちになりかねない。
  このような現状を踏まえ、確定拠出年金の中でもとりわけ「個人型確定拠出年金」の普及促進に向けた政府による何らかのテコ入れ策が必要ではないだろうか。具体的には、加入限度額の引き上げ、加入者が運営管理機関などへ支払う手数料の助成などが考えられる。確定拠出年金はその制度の性質上、既存の年金に比べ運営コストがかさむ面は否めない。そこで、テコ入れ策による制度の普及 → スケールメリットによる手数料の引き下げ → さらなる制度の普及、という好循環を促す必要があるだろう。今後とも確定拠出年金をめぐる動向が注目される。
2002.03.12
前のページにもどる
ページトップへ