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「ウィンドウズ・メディア・プレーヤー」は、スパイウエア?
〜ユーザーのDVD利用履歴を追跡する機能〜
  米国マイクロソフト社の『ウィンドウズ・メディア・プレーヤー』は、ウィンドウズ・マシンに無料で標準搭載されている音楽、動画再生ソフトのことである。音楽CDやインターネット上でダウンロードした音楽データ、動画ファイルを再生したり、インターネットラジオ局の受信をしたりするなどマルチメディアに対応している。特に、最新OS「ウィンドウズXP」に付属するバージョンでは、DVDのフル機能をサポートするようになっている。
  最新のメディア・プレーヤーには、DVDを再生するたびに、マイクロソフト社のサーバに接続し、ユーザーが見ている映像をリストにして伝える機能が備わっている。つまり、マイクロソフト社はどのコンピュータで何の映画が再生されているか追跡可能だということが、あるコンピュータ・セキュリティの専門家の指摘で、先月明らかになった。また、音楽CDについても同様のことがいえる。
  メディア・プレーヤーは、DVDやCDを再生する際、マイクロソフト社のサーバにアクセスし、DVDやCDのタイトルとチャプター、ジャケットなどの情報を取得する。一方サーバは視聴されているDVDやCDを識別する電子指紋と、特定のメディア・プレーヤーを認識する*cookieを付与する。そしてメディア・プレーヤーはcookieを送り返すことでデータのやり取りが行われるという仕組みだ。こうして、マイクロソフト社は特定のコンピュータ上で、どのDVDやCDが視聴されているかを追跡できることになる。
  *cookieとは、ユーザー情報やアクセス履歴などの情報をWebブラウザなどのインターネット・ソフトとWebサーバ間でやりとりするための仕組みやファイルのことで、Webサーバがユーザーを特定化するために使われ、ユーザーのPCにファイルとして保存される。
  この機能による情報収集を基に、ユーザーの嗜好が把握され、そのデータが販売されたり流出したりはしないかということが危惧されている。個人の娯楽嗜好を知りたがるマーケティング企業や、犯罪データとして活用したい警察関連などに情報が渡ることはないのだろうか。マイクロソフト社は、収集したデータの販売や共有は一切行われておらず、今後もする予定はないと述べているが、将来的にも守られる保証はない。
  この機能について、ユーザーにはまったく知らされていなかったことにも疑惑を持たれている。マイクロソフト社は、指摘を受けた直後、プライバシー規約を訂正し、情報取得などの事実を明らかにした。しかし、情報をこれ以上収集させないようにするための具体的な方法は、ユーザーには一切説明されていない。また、そのために設定を変更した場合、インターネット上の音楽や映像を利用することができなくなるようだ。
  たとえ不正な目的のために作成されたのではないにしても、プライバシーの侵害の恐れがあるプログラムを一般的に「スパイウエア」と呼ぶ場合がある。フリー・ソフトに多くみられるのが、バナー広告を表示するソフトで、取得した情報を基に、ユーザーの嗜好にあった広告を効果的に表示させようとするものだ。その程度なら、許容する人もいるだろうが、今回のようにソフト自体がすでにハードディスクにインストールされている場合、どのファイルにもアクセスすることが可能となる。スパイウエアによっては、メールの内容、クレジットカード情報、パスワードなどを読み込むようなものがある可能性も否定できない。今後、プライバシー保護やセキュリティー問題を考えるとき、ウィルスやワームだけではなく、スパイウエアに対する危険性も無視できなくなってきている。
(フリーライター  志田 和隆)
2002.03.19
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