>  今週のトピックス >  No.385
株価の急回復で「3月危機説」が遠のく
●1カ月で株価が22%上昇
  3月に入り、株価が急速に回復している。米国における同時多発テロ事件の影響を受けて昨年9月に株価が1万円割れを起こしてからは、低調な相場が続いていた。しかし、2月6日に9,420円の底値をつけてから上昇に転じ始め、3月20日現在で1万1,549円まで回復した。約1カ月で22%以上も株価が上昇したことになる。株価の急回復を受けて、これまで盛んにいわれていた「3月危機説」が急速に色あせてきた。2000年問題と同様に、あれだけマスコミで騒がれていたのがウソのように市場には楽観ムードが漂い始めている。今年度からは保有株の評価が決算期末だけでなく、期末の1カ月間の平均株価で計算できるようになったため、たとえ3月末にかけて株価が値下がりしても大きな影響はないとみられている。
●3月危機説の正体とは?
  そもそも「3月危機説」とは一体何だったのだろうか?株価が下落すれば、銀行が保有している株式が値下がりし、含み損を抱えることになる。昨年9月の時価会計導入により、含み損の一定割合を自己資本から差し引かなければならなくなったため、株価の下落は銀行の自己資本を食いつぶし、財務内容の悪化に直結する。結果として銀行の信用力が低下し株価が急落するなど、預金者の取り付け騒ぎを引き起こしかねない。さらに、株価の下落は銀行だけの問題ではなく、生命保険会社などを巻き込み一連の金融不安の連鎖に直結する可能性がある。4月のペイオフ解禁を控えて、銀行の選別が進んでいる中で、株価安に追い打ちをかけられた金融機関が、経営困難に陥り金融危機が起こるのではという不安があった。
●株価の回復は一時的なもの?
  今回、株価が急回復したことで当面の危機は回避できそうだが、もちろんこれでホッとするわけにはいかない。株価が回復した原因は、米国の景気回復期待から市場ムードが好転したことや、「空売り規制」など外部的な要因によるものだ。根本的な問題である不良債権処理が進まない限り景気回復にはつながらず、このまま株価が一本調子で上昇するとは考えにくい。今回の株価回復が、一時的なものに終わる可能性も高いのだ。政府はひとまず難局を乗り越えたことで安心し、構造改革の手を緩めるようなことがあってはならない。
●銀行の財務体質の強化が必要
  また、株価の上昇により救われる金融機関は多いだろうが、その中には本来ならすでに力つきているはずの金融機関も含まれている可能性が高い。柳沢金融相は、「4月1日に営業している金融機関はすべて健全であるように」との指示を出したが、4月時点ではかろうじて助かった金融機関が、いずれまた株価の下落により経営困難に陥るのではないかという不安がある。ペイオフ解禁後に金融機関が経営困難に陥るようなことが起これば、預金者の不安が高まり、それこそ連鎖的な金融危機に発展しかねない。金融機関は、少し体力が回復したからと安心するのではなく、来年の3月に向けて不良債権処理と財務体質の強化をさらに押し進める必要があるだろう。
(マネーライター  本田 桂子)
2002.03.26
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