>  今週のトピックス >  No.386
食品の偽装表示問題と法制度
  最近、牛肉、豚肉、鶏肉などの食品の偽装表示が問題になっているが、実は以前から消費者団体などによってたびたび指摘されていた。市場に出回っているササニシキの総量を調べたところ、作付面積から予想される収穫高の10倍を超えていたという逸話があるくらいだ。
  食品の表示に関する法律としては、品質表示の適正化を目的とする「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」(JAS法)、食品の安全性の確保を目的とする「食品衛生法」、公正な競争の確保や不当な表示を禁止することを目的とする「不当景品類及び不当表示防止法」、適正な計量の確保を目的とする「計量法」、国民の栄養改善の観点からの「栄養改善法」などがある。特に消費者に対しより詳しい情報を提供するため作られたJAS法は生鮮・加工食品の表示方法を定めており、商品選択の要となるものだ。しかし、これがあいまいに表記されていたり偽装されるようでは安心して買い物などできない。実際に近くのスーパーマーケットをのぞいてみると、怪しい表示の食品が数点見つかった。
  「無着色」ハムと袋には書いてあるが裏の表示を見ると、「発色剤」として亜硝酸塩含むとなっている。「着色」というのは、外部から色素を添加して色をつけることであり、「発色」というのは、その食べ物が本来含んでいる色素を、より鮮やかにしたり、変色させないような効果を持つものを添加することなのだという。水戸納豆というのは、水戸原産の大豆かと思いきや、表示を見ると輸入大豆だった。紀州の梅干には、梅の産地表示がない。加工食品には原産地表示の義務付けがされていないという。沼津名産のアジの開きの原産地はオランダでも、加工したのが沼津ということらしい。また、刺身・切り身については、産地表示が義務付けられてはいるが、調べてみると表示のないものがあった。「生」か「解凍」であるかも明記しなくてはならないはずなのだが、不明なものがやはり店頭に並んでいた。畜産物の場合は、「国産 牛もも肉」といった原産国表示があれば良いが、偽りの都道府県や市町村名などを示した場合には違反となる。
  JAS法による監視体制は次の通りだ。農水省などに不当表示の情報が入ると、まず「立ち入り検査」し、明らかになると、業務の改善や流通の一部停止などの「指示」をする。改善されない場合は、「業者名の公表」が行われる。その後は、「改善命令」、「50万円以下の罰金」という4段階の指導・罰則が科せられていく。しかし、このプロセスには批判が多い。なぜ違反が明らかになった時点で、すぐに公表しないのか?罰則が軽すぎないか?法的な抑止力となっていないのではないか?日常的なチェック体制がまったく確立されていないのである。
  雪印食品、スターゼンなどのケースは、たまたまマスコミに社名が流れて話題になったが、それ以前では、国産と偽ったウナギのかば焼きなど、4件が「指示」を受けるにとどまり、社名は公表されなかった。健康や安全を考えるとき、食品ほど厳格であらねばならない商品はないだろう。消費者優先の法律へと改定すべきだ。また、監視機関は行政や業界から独立した第三者機関が望ましい。消費者としては、生活防衛のために、少しでもおかしいと思うものを見つけたら、店頭や消費者対応部署、消費者センター、マスコミなどへと声を出していくことが必要だろう。
(フリーライター  志田 和隆)
<参考>
農産物・畜産物の表示事項 『名称』・『原産地』
水産物の表示事項 『名称』・『原産地』・『解凍』・『養殖』
加工食品の表示事項 『名称』・『原材料名』・『内容量』・『賞味期限(品質保持期限)』・『保存方法』・『製造業者等の氏名または名称及び住所』[原料の原産地表示義務のあるのは、さば、あじ、うなぎ、わかめの水産4品目(塩干のさば・あじ、塩蔵さば、うなぎ蒲焼など、乾燥わかめ、塩蔵わかめ)、農産物漬物]
玄米および精米の表示事項 『名称』・『原料玄米』・『内容量』・『精米年月日』・『販売業者等の氏名または名称、住所及び電話番号』
「JAS法による表示義務事項」より
2002.03.26
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