>  今週のトピックス >  No.388
今後望まれる投資知識の普及
  「日本版ビックバン」、「ペイオフ解禁」、「日本版401k制度の開始」。これら最近の動向に共通するキーワードとして、資産運用における「自己責任」が挙げられる。とはいえ、「自己責任」とは、資産運用の基礎的な知識を身に付けて初めて成り立つのではないだろうか。だが現状を見てみると、一般の人々の資産運用や投資に関する知識は、かなり心もとないものと言わざるを得ない。
  例えば、何度となく繰り返される出資法違反などの巨額詐欺事件である。長引く低金利にしびれを切らした多くの個人が被害に遭っている。この場合、資産運用の基本である「リスクとリターンの原則」をしっかりと見につけていたならば、この長低金利時代に「年10%の利回りを保証」などあり得ないことに容易に気付いたのではないだろうか。また、退職金など大切な老後資金をすべて特定銘柄の社債購入に注ぎ込んだあげくに、支払不能となり途方に暮れる人々の話もよく耳にする。こうした事例にしても、資産運用の基本である「分散投資」を実行していれば、最悪の事態だけは免れることができたのではないだろうか。
  戦後や高度成長期にかけての慢性的な資金不足の時代には、銀行、生命保険会社などの機関投資家、もしくは国営金融機関たる郵便局に資金を集中させ、それを配分する間接金融の仕組みが効率的に機能してきた。この仕組みは、言い換えれば、国や巨大な機関投資家が資産運用リスクを一手に引き受け、一般の人達は資産運用のリスクから遮断されてきたことを意味する。つまり、一部の富裕層を除けば資産運用などは、ほとんど考える必要がなかったと言っても過言ではない。
  また、資産運用で「お金を殖やす」のはうしろめたいこと、額に汗して「モノ」を作り出すことこそが尊ばれるべきこと、といった価値観も根強いものがある。しかし、巨大な銀行・生命保険会社などが不良債権や逆ざやにあえぎ、国の巨大な運用資産である公的年金も困難に直面する中で、もはや国民一人ひとりが少しずつリスクを負担せざるを得ない時代が否応なく到来している。
  かつて預金獲得にエネルギーを注いだ銀行が、今では投資信託の販売を重視していることや、国が確定拠出年金制度を導入し、自助努力での老後資金作りを推奨し始めたことなどが、これを象徴している。一般の人々が投資の知識を身に付け、金融機関などの専門家と対等に渡り合えるような施策が急務といえよう。アメリカのような学校教育における投資教育の採用、確定拠出年金を契機とした職場などでの投資教育の展開など、今後に期待したい。
2002.04.02
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