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アレルギー物質含有食品の表示義務化
  昨年4月1日より施行された食品衛生法の改正により、アレルギー物質を含有する食品に表示基準が定められている。平成14年3月31日までに製造、加工、もしくは輸入された食品などについては、猶予期間が設けられていたが、この4月から全面的に義務付けされる。表示義務の対象となるのは、容器包装された加工食品および添加物である。その食品を摂取したことによりアレルギー症状を引き起こす可能性の高いものと、その症状が深刻な5つの食品が「特定原材料」として指定されている。また、症例は少ないが摂取したことによってアレルギーを起こす可能性のある食品を「特定原材料に準じるもの」として19品目規定し、表示を行うことが奨励されている。
「特定原材料」
(省令による規定)
小麦、乳(乳製品含)、卵、そば、落花生
「特定原材料に準じるもの」
(通知による規定)
あわび、いか、いくら、えび、オレンジ、かに、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン
  この改正により、これまで原材料表示で「醤油」のみの場合には、今後は「醤油(小麦、大豆を含む)」に、「醸造酢」は「醸造酢(リンゴを含む)」に、「乳化剤」は「乳化剤(卵由来)」という表記にしなければならない。「○○が入っているかもしれません」というようなあいまいな表示は認められない。というのも、このような「可能性表示」を認めた場合、PL法対策の企業防衛として、あるいは製造者による原材料調査の負担回避のために、十分な調査を行わず安易に「可能性表示」を行う製造者が現れることが予想されるからだ。そうすると、アレルギー患者は症状の出ない商品についても避けざるを得ず、選択の幅が狭められてしまうことになる。
  また、「肉類」「穀類」「果汁」などの複合化表示のみの場合も認められず、「牛肉、豚肉、鶏肉」「小麦、大豆」「りんご、キウイフルーツ、もも」などのように定められた名称を記載しなくてはならない。もちろん、製品中に「特定原材料等」に指定されている食品が、製造時の「キャリーオーバー(注)」などのごく微量であっても含まれる場合は表示が必要になる。
(注)キャリーオーバー
  食品の原材料の製造又は加工の過程において使用され、かつ、当該食品の製造又は加工の過程において使用されないものであって、当該食品中には当該物が効果を発揮することができる量より少ない量しか含まれていないものをいう。(食品衛生法第11条 施行規則第5条ホより)
  現在日本では、人口の2〜3%(1歳児では15%)が、食物アレルギー患者といわれている。症状としては、下痢、おう吐などの胃腸症状や、しっしん、じんましん、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患、ぜんそく、気管支収縮などの呼吸器疾患などがある。中には死につながる深刻なケースもあり、過去5年間で15人が食物アレルギーで死亡している。子どもの場合、主なアレルギーの原因は、卵、牛乳、ピーナツ、大豆、小麦などが多い。一方、大人の場合は、えび、ロブスター、かになどの甲殻類、ピーナツ、くるみなどの木の実、魚や卵などで、年齢により原因にも違いがみられる。
  近年、花粉症の人が果物を摂取した後に、アレルギー症状(花粉と果物に含まれる共通の抗原による反応)を起こすことが少なくないとも指摘されている。米国、FDA (連邦食品医薬品局)の資料によると、大人の約1.5%および3歳以下の子どもの6%が食物アレルギー患者で、毎年約150人が食物アレルギーで死亡しているという。
  アレルギー物質含有食品の表示基準の規定に違反した場合、都道府県知事は、まず「営業者に対して、表示事項を表示し、又は遵守すべき事項を遵守すべき旨を指示」をする。その後、改善がみられない場合、「営業許可を取り消し、又は営業の全部若しくは一部を禁止し、期間を定めて停止することができる」の措置をとることになる。この命令に従わない場合は、6カ月以下の懲役または3万円以下の罰金に処せられることとなる。しかし、検査法、チェック体制については、現在厚生労働省も検討中であり、消費者としては今後も注目していく必要がある。
(フリーライター  志田 和隆)
2002.04.02
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