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ペイオフ解禁によって変動する預金金利
  ついに、ペイオフが解禁された。本来の予定通りであれば、すでに解禁されていたはずだが、さまざまな調整のうえ1年間延期され、平成14年の4月1日解禁となったのである。ペイオフ解禁とその認知度向上の影響により、銀行の普通預金の金利が引き下げられるという副作用が生じていることは、中でも注目すべき事実だ。ペイオフ解禁は個人への自己責任という痛みに加え、普通預金の金利の引き下げという痛みももたらす結果となったのである。
  平成14年4月1日より、まず決済性預金以外の預金についてペイオフが解禁された。具体的にいうと、定期預金については解禁されたが、普通預金や当座預金などは、来年の平成15年4月まで解禁されない。そのため、企業や大口預金者、地方自治体などはそろって定期預金を普通預金に移し、大手都市銀行を中心に普通預金残高が増加の一途をたどっている。大手5行だけでも2月-4月期の同月前年比で約11兆円増となった。
  ペイオフ解禁の際に1,000万円とその利息の払い戻しが確実に保証されているのは、以下のような保険関係が成立しているためである。
  平成13年度までは、定期預金も普通預金も全額保護であったため、(2)の保険料の料率は定期預金も普通預金も同一であった。定期貯金は保険金支払額が1,000万円とその利息に限られるが、普通預金は引き続き全額保護される。従って支払う保険金が膨大な金額になることも考えられるため、保険料率に格差を生じさせる必要がある。また、ペイオフ解禁の影響で普通預金に預金が移行しているのであれば、なおさら預金保険機構の保険金支払いのリスクは増加しているといえる。
  預金保険機構は平成14年3月29日、普通預金に対する平成14年度の保険料率を0.094%(平成13年度0.048%)と2倍程度引き上げ、また定期預金に対しては支払いの上限が設定されるため保険料率を0.08%(平成13年度0.048%)に引き上げることを発表した。この保険料は預金者の負担となるため、保険料率が上がる普通預金はさらに金利が引き下げられることになる。
  一方、定期預金に関してはその逆に、金利が引き上げられる可能性が高い。中央銀行の公定歩合操作による金利の上げ下げではなく、銀行業界のセーフティーネットである預金保険機構の保険料率変更によって金利が左右されるというこの現実は、日本の金融業界の現状を最も象徴した出来事なのかもしれない。
2002.04.09
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