>  今週のトピックス >  No.397
異常気象によって盛んになる「天候ビジネス」
●観測史上最も早い桜の開花宣言
  今年の春は、ずいぶんせわしなく過ぎ去っていった。例年、都心では4月の入学シーズンごろに咲く桜が、卒業式を待たずに開花し散ってしまったからだ。東京では1953年の観測開始以来史上最も早い3月16日に開花宣言が出され、その後も全国各地で記録が更新されている。気象庁によると、今年は記録的な暖冬で1、2月の気温が高かったことが開花を早めた原因らしい。不安定な春先の気候を表現するのに「三寒四温」という言葉があるが、今年は「三寒」がないまま春がやって来たようだ。
●異常気象がビジネスに与える影響は?
  暖冬のおかげで、全国各地のお花見ツアーが予定変更や中止になるなど、ビジネスにもさまざまな影響が出ている。東北地方では「弘前さくらまつり」をはじめ、さまざまな桜関連のイベントが開催されているが、中には開催を9日間も前倒ししたイベントもある。大規模なイベントになると日程の変更は不可能であるため、関係業者は頭を抱えてしまっている。不況の影響もあるだろうが、暖房機具や冬物衣料の売り上げも芳しくない
  その一方で良い影響もある。長崎県のハウステンボスでは春休み期間中の入園者数が、前年同期比40%増となった。また、東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)など、テーマパークの入場者数は軒並み好調である。
●注目される天候デリバティブ
  このように、気象がビジネスに与える影響は大きい。近年では、異常気象の常態化とあわせるように「天候ビジネス」が活況を呈している。例えば、ピンポイントで天候を予測する民間気象情報会社や、平均気温が何度下がると売り上げがどの程度落ち込むか、といった予測を基にリスク管理を行うコンサルティングサービス会社の登場だ。中でも最近では、損害保険会社が中心となって販売している「天候デリバティブ」という商品が注目されている。
  「天候デリバティブ」は、契約期間中の気温や降水量が事前に決めた範囲から外れた場合に、補償金を受け取れるという金融派生商品である。1997年にアメリカで開発され、日本でも急速に導入が進んだ。昨夏、大手スーパーがエアコンの販売に際して「寒かったら1万円ご返金」というチラシをまいて話題になったが、スキー場やゴルフ場、アパレル業界など気候に左右される商品を扱っている業者が導入するケースが多くみられる。
●ユニークな新商品が続々登場
  今年に入ってからは、三井住友海上火災保険が夏の日照時間が不足して商品が売れなかった場合の損失を穴埋めする「日照時間デリバティブ」を開発して、注目を集めている。また、東京海上火災保険では、お花見シーズン前に「桜前線」「お花見日和」というユニークな商品を発表した。「桜前線」は開花日の前後に低温の日が多かった場合に決済金を支払う商品であり、また「お花見日和」は桜の開花中に一定日数以上の雨が降った場合に決済金を支払うという商品である。だが実際は、開花日の前後に暖かい日が続き早く桜が散ってしまうという、予想外の結果に終わった。
  気象庁によると、今夏は4年ぶりにエルニーニョ現象が発生する可能性が高いという。地球の温暖化が収まらない限り、異常気象を対象にした新ビジネスはますます盛んになりそうだ。
(マネーライター  本田 桂子)
2002.04.16
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