>  今週のトピックス >  No.403
多様化する退職給付制度
  昨年10月に施行された確定拠出年金制度が注目を集める中、これと同様に今後の退職給付制度を方向付ける「確定給付企業年金法」がこの4月から施行されている。確定給付企業年金法では、厚生年金基金※において、厚生年金の代行部分を国に返上することが認められた点がクローズアップされている。しかし、確定給付企業年金法の意義は、単に年金資産の積み立て不足に苦しむ企業負担の軽減だけではなく、これまで根拠となる法令も監督官庁も異なる企業年金を、統一的な枠組みのもとに再編し、受給権の保護を図る点にある。
  既存の確定給付型の企業年金制度は、厚生年金基金と適格退職年金の二本立てとなっていたが、新制度では、新設される「基金型企業年金(企業年金基金)」、「規約型企業年金」および厚生年金基金の三本立てとなる。基金型企業年金は、企業とは別の法人格を持った基金により運営される点で厚生年金基金に類似しているが、厚生年金の代行部分を持たない点が大きな相違点である。また、規約型企業年金は企業が生命保険会社や信託銀行などに年金資産の運用や給付を委託する点で現行の適格退職年金と運営の仕組みが類似しているが、適格退職年金より積み立て義務を課した点が特徴となっている。
<従来の制度>   <新しい退職給付制度>
退職一時金
厚生年金基金
適格退職年金
退職一時金
厚生年金基金
基金型企業年金:厚生基金基金に類似も、厚生年金の代行なし
規約型企業年金:適格退職年金に類似も、受給権保護強化
確定拠出年金
  企業の退職給付制度を、その財源が企業の資産と分離されていない退職一時金制度と、確定給付・確定拠出を問わずその財源が企業から分離されている企業年金制度に大別すると、目指すべき方向性としては、後者へのシフトではないかと考えられる。産業構造の変化による企業の再編、淘汰が進む時代にあっては、企業倒産のリスクから退職給付制度を切り離す企業年金制度の意義は大きい。しかし、中小企業でも比較的採用されている適格退職年金の廃止が決まり、類似の制度である規約型企業年金へ移行しようとした場合、積み立て基準が厳格化されたため移行が困難になるケースも予想されている。これでは時代の要請に逆行して、かえって伝統的な退職一時金制度に逆戻りしかねない。次善の策として、適格退職年金から確定拠出年金や中小企業退職金共済への移行が可能とされているが、こうした制度も含めスムーズな移行を促す政策が何より望まれる。
厚生年金基金とは、公的年金である厚生年金本体の一部を代行して掛金の徴収、積立、給付を行うとともに、独自の上乗せ給付も行う企業年金である。
2002.04.30
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