> 今週のトピックス > No.405 |
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簡易保険が先天性疾患の子どもたちの加入を拒否 | ||||||||||||||||||||
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![]() ●先天性異常の子どもたちの保険加入を一律拒否
郵政事業庁が、先天性の病気の子どもたちについて、学資保険も含めた簡易保険への加入を全面的に拒否していることが判明して問題になっている。加入を拒否されたのは、厚生労働省の指導で実施している「新生児マス・スクリーニング※」での血液検査で「先天性甲状腺機能低下症※」や「フェニールケトン尿症※」(いずれも病気の発症には遺伝子の異常がかかわっているとされる)と診断された子どもたちである。
![]() 昨年の夏、先天性疾患と診断された子どもたちを対象に行われたアンケート調査で、病名を告げて簡易保険に申し込んだ例のすべてで加入を拒否されていたことが分かった。同庁は、継続治療が必要な先天的な病気の患者については、すべて加入を拒否していることを事実上認めた。今回の出来事は、民間の保険業界にも大きな波紋を投げ掛けている。
![]() ●欧米では遺伝子差別を禁止する国もある
一般的に、保険会社ではすでに何らかの病気を発症している人の加入を認めていないが、病気によっては保険料に差をつけるなどして加入を認める場合がある。今回問題になっている2つの病気についても、一部の生命保険会社では加入を認めているという。適切な治療を受ければ発症を防げる病気について、公的機関が保険加入を拒否していることは問題だが、それ以上に問題視されているのは、今回の出来事が実質的に「遺伝子差別」につながるためだ。近年、ヒト遺伝子の解明が進み遺伝子治療が実用段階に入ったことで、就職や保険加入の際の差別が、広がりかねないという懸念が強まっている。アメリカでは、1990年代に遺伝子検査の結果によって保険加入の拒否や就職差別などの問題が生じたため、現在およそ20州で遺伝子差別の禁止法が制定されている。また、オーストリアでは保険会社が遺伝子情報を利用することを制限する法律がある。日本国内では、2000年に科学技術会議(首相の諮問機関)がまとめた研究指針案で、遺伝的特徴に基づく差別の禁止や遺伝子情報の保護を訴えているが、諸外国と比べて政府の対応は遅れているといわざるを得ない。
![]() ●すみやかなガイドラインの策定が求められる
2000年に毎日新聞が行ったアンケート調査では、国内の主な生命保険会社の半数以上が将来的には加入時の審査の際、遺伝子診断を利用することを検討しているという結果が出た。保険会社の立場からすると、病気の発生が高確率で予測される人の加入を避けたいと思うのは当然だが、近い将来、遺伝子診断はがんになりやすい体質や肥満体質、アルコール依存症になりやすい体質などについても予測可能になるといわれている。そうなれば、生まれつき保険に入れない人が急増すると同時に、遺伝子診断により保険給付が受けられなかった人からの訴訟(すでに民間の生命保険会社で遺伝子診断の結果、保険給付を拒否された男性の訴訟が起きている)も増加するだろう。
![]() 日本医師会は今後、郵政事業庁に対して、国際的にも通用する査定標準を策定し、国民に開示するよう働き掛ける方針だ。政府は速やかに保険契約や雇用の場における遺伝子診断の使用についてのガイドラインを策定し、公表することが求められる。
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![]() (マネーライター 本田 桂子)
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2002.04.30 |
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