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注目を集める不動産投資信託
  最近、さまざまな投資信託商品が発売されている。以前に紹介した上場型投資信託(ETF)もその一例であるが、もう一つ注目すべき投資信託として、不動産投資信託(REIT:Real Estate Investment Trustの略)、いわゆる日本版不動産投資信託「J-REIT」(JAPAN-REIT)という商品がある。
  J-REITは、小口の資金を投資家から集めて投資を行うという点では通常の投資信託と同様であるが、集めた資金の投資先が株式や債券ではなく、オフィスビルや商業施設などの不動産である点が一般的な投資信託と大きく異なる。この不動産投資信託は、もともと1990年以降にアメリカで急成長した「REIT」を日本向けに商品化したもので、今後アメリカ同様に日本でも大きな成長が期待されている。
  ではこの不景気で不動産市場が低迷している現状下で、なぜ不動産へ投資するJ-REITに資金が集まっているのであろうか。 J-REITには預貯金や一般的な投資信託と異なった魅力があり、その点が投資家から支持されていると思われる。その最大の魅力とは配当利回りの高さである。例えば、3月7日に初の決算を迎えた日本ビルファンドの予想配当利回り(配当÷投資口の市場価格(株価)で計算される)は、年6.1%で、当初の予想を上回る好調なものとなった。現在上場されているほかのJ-REITの予想配当利回りもやはり4〜6%となっている。超低金利時代においてこの配当利回りは驚異的な数値であり、リスクを許容しても投資意欲をわかせる結果になったといえるだろう。さらに配当の回数は年2回が予定されており、配当時期の異なる数種類をうまく組み合わせれば、不動産投信の配当金を個人年金のようにして活用することも可能であり、高齢者などの資産運用にも魅力ある商品といえる。
  投資に必要な資金も現在は一口約50万円前後で、個人投資家にとって手ごろな価格でありその点も魅力の一つといえる。また2002年度税制改正により、100万円の特別控除をはじめとする各種証券税制優遇も適用可能であり、通常の投資信託よりも投資家にとって魅力的であろう。
注意しなければならない点もある。
  まずJ-REITのメインの収益源は賃貸収入であること。よってオフィスビルなどが供給過剰になった状況下では、当然賃料自体の下落により収入減少となり、これが配当利回りの低下を招く可能性がある。5月6日の日本経済新聞の調査によれば、東京地区の新築ビル賃料は、昨年秋の調査より15%以上も低下しており、これらの影響は少なからずJ-REITの配当に影響を及ぼす可能性がある。
  またJ-REITは、通常の株式同様に市場で取り引きされるため価格が変動する。よって元本を割り込むこともあり、たとえ配当利回りで収益を得たとしても、投資元本が割り込むことでトータル収支はマイナスとなる可能性があるという点も認識しておかなければならない。加えて配当金は株式同様配当所得となるため、金額によっては総合課税される。総合課税となれば、高額所得者において20%源泉分離課税より不利となるケースもある。
  今年度前半、相次ぐ上場や従来設定分の配当金が支払われたりと注目が集まるJ-REITであるが、高い配当利回りだけに目を奪われるのではなく、J-REITのメリット・デメリットを正しく理解し、その上でクライアントへの適切な購入アドバイスを心掛けたい。
2002.05.21
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