>  今週のトピックス >  No.423
MMFに人気復活の兆し!
  MMFが再び注目を集めている。以前も取り上げたが、2001年11月にアメリカのエンロン債を組み入れていた4社のMMFが、元本割れを起こし話題となった。その後4社のMMF残高は激減し、会社によっては償還を決めたものもある。そのようなMMF販売逆風の中、2002年1月には、投資信託協会がMMFの運用ルールを明確に制定した。これにより、組み入れ債券に対する残存期間や格付け条件に一定限のルールが設けられ、それを遵守した運用が行われるようになった。
  具体的に述べると、投資可能な債券の格付下限はトリプルB債と明確化され、運用実績を毎月インターネットのホームページなどで開示することも義務づけられた。これにより投資家は、従来以上にMMFに関して安全点検が可能となったわけである。しかし、いかにこのようなルールが設けられようとMMFが投資信託である以上、運用のリスクを投資家自身が負うことに変わりはない。また、組み入れ債券がトリプルB以上というルールが制定されたとはいえ、それはあくまで組み入れ時点の話である。組み入れ債券の今後の債務不履行の可能性を否定したものではない。
  投資信託協会がわずか3カ月で新ルールを制定した背景には、2001年11月以来MMFの残高が元本割れを起こした4社を含め、全体で約10兆円以上も流出したことがあげられる。元本割れを起こす前までは、MMFを購入する投資家は「元本保証はないといわれているが、まさか元本割れはないだろう。しかも金利は預金より高いし、魅力的な商品だなあ」というような安易な考えで、預金からシフトさせた人も多かったのではないだろうか。その証拠に元本割れを起こした途端、18兆円の残高のうち半分以上が流失しているのである。
  しかしそのような厳しい環境の中、2002年3月までと異なりMMFに追い風が吹きはじめた。それというのもペイオフが解禁され、必ずしも預金が元本保証ともいい切れなくなったことだ。ペイオフ解禁により、預金は預け入れる金融機関の信用リスクを負うことになったからである。MMFは投資信託なので、投資家から集めた運用資金は信託銀行の信託勘定に分別保管されており、万一金融機関が破たんしたとしても分別保管されている信託財産は保護される。つまり、運用によるリスクを投資家が負う代わりに、金融機関の信用リスクは回避できることになる。
  ペイオフ解禁前は「元本保証の預金」か「預金より高利回りのMMF」の商品性比較であったが、ペイオフ解禁後は「金融機関の信用リスクを負う預金」か「運用によるリスクを負うMMF」の商品性比較になった。これはMMFにとって、2001年11月より続いた厳しい販売環境の終焉を告げる出来事かもしれない。事実そのようなMMFの商品性が改めて見直され、2002年4月のMMF残高は5カ月ぶりに増加に転じている。
  「MMFであっても投資信託である以上、元本割れの可能性はある」と広く認知された今、金利や分別保管制度など本来の商品性が正しく理解されれば、2003年3月のペイオフ全面解禁の際には、普通預金などの受け皿商品として、再びMMFが残高を伸ばしてくるのではないだろうか。
2002.06.04
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