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女性と年金問題Vol.3
〜女性の年金制度における課題(2)〜
  前回は、4つの課題のうち「多様化する女性のライフスタイルと標準的な年金の考え方との乖離(かいり)」および「被用者年金の加入期間の短さ、低賃金に伴い相対的に低水準にとどまる女性の年金」について取り上げたが、今回は残りの2つのテーマについて取り上げる。
3.さまざまなライフスタイルを選択する女性の間での不公平感
ここでは、第3号被保険者制度と遺族年金制度の問題が取り上げられている。
(1)
第3号被保険者制度の問題点
 
第3号被保険者は、専業主婦で無職のため収入がないという前提で保険料をまったく負担していない。このことについて、ほかの働く女性たちから「不公平」だという声があがっている。


 
これは片働き世帯を優遇する制度である。
   
短時間労働者が第3号被保険者に留まるため、就業調整を行い優遇を享受している。
   
*就業(勤務日数)調整とは、社会保険での保険料負担を避けるためや税制での配偶者控除等の適用を受けるため、被扶養者の地位を失わないようにするために年間収入を調整すること。
 
専業主婦に保険料負担能力がないという根拠はない。
   
短時間労働(パートなど)による収入、家事・子育てなどは、夫の職場労働と同様に生産的な活動であり、家事労働の帰属所得を考慮すべきである。
 
第3号被保険者は、被保険者の年齢が上がり収入が増えるに従いその割合が増えている。そのような余裕のある第3号被保険者を、第2号被保険者全体で支えることは社会的に受容できない。
 
自営業者の妻は保険料を負担している。また、母子家庭の母は保険料を負担しており、免除されたとしても減額されるのに比べ不公平。
 
自ら働かないことを選択しているのに、同じ基礎年金給付が保障されるのは不公平。


(2)
遺族年金制度の問題点
 
下記のような声や問題点が指摘されており、遺族年金制度の廃止または見直しが求められている。

 
年金制度は個人単位の考え方を徹底すべき。現遺族年金制度は廃止または希望者のみ加入の任意加入制度への変更。
 
共働き世帯と片働き世帯の給付と負担の関係がアンバランス。夫婦世帯で現役賃金が同一の場合、片働き世帯の遺族の方が遺族年金額が大きい。
 
共働き世帯で、配偶者の死後に働いて支払った保険料に対する給付がまったくない場合がある。
 
男性と女性で遺族年金の支給要件に違いがあるのは不適切。
 
離婚後、夫が再婚して死亡した場合、前妻には遺族年金は支給されず現妻に支給される。婚姻期間の長短は無関係。
4.女性の長い老後期間に対する保障
(1)
離婚時の年金分割問題
 
熟年離婚が増加するとともに、離婚による高年齢独身女性の経済基盤の劣悪さが問題となっている。厚生年金における標準報酬比例年金部分は、被保険者(働いている夫)本人にのみ支給され、離婚した配偶者には何の権利も認められていない。離婚による財産分与時の年金の取り扱いについても、判例において確立された取り扱いはみられない。従って、離婚時に夫婦の間で分割が可能になるような制度整備が求められる。

(2)
遺族年金の役割
 
夫の死亡後、相当長い期間単身である可能性が高い被用者の妻にとって、遺族年金はその生活基盤として重要な役割を担っている。高齢期の遺族厚生年金は、夫の保険料納付に基づく老齢厚生年金が夫の死亡後遺族厚生年金に転じる仕組みでこれまで充実を図られてきた。女性の就業の増加、多様化が進展する中で、女性自らが働いて保険料を納付したことを、できる限り給付額に反映される仕組みに構築することが課題となっている。
以上のように、女性と年金問題を考えるときの主な論点は、(1)個人単位か世帯単位か、(2)応能負担か応益負担か、(3)公平性の確保という3点に集約されている。
厚生労働省: 「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会・報告書」より
<要約>
http://www.mhlw.go.jp/shingi/0112/s1214-1.html
2002.06.04
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