>  今週のトピックス >  No.428
死亡保険金、契約者の違いで税金が大幅増
  妻の家事労働に対する経済価値の認識も高まり、被保険者を妻とする生命保険契約の保険金も高額となっているケースがある。しかし実際に妻が死亡したとき、支払われる死亡保険金に対する税金が契約形態の違いにより大きく異なってくるので注意が必要だ。
  通常、サラリーマンが被保険者を妻として契約する場合、妻が専業主婦やパート従事者だと、ほとんどの契約は契約者および受取人は自分(夫)となっている。この場合、下記サラリーマンの事例のように死亡保険金が高額の場合、所得税・住民税が大幅に増え思いもかけぬ税額に驚くことになる(下記事例では税額が約280万円アップ)。
  このとき注意しなければならないのが、死亡保険金に対する税額だけでなく所得額が大幅に増えることにより、さまざまな税務上の取り扱いが変わってくることだ。例えば、下記の事例では所得が1,000万円を超えているので、この要件のみで配偶者特別控除の対象から外れてしまう。従って、適用されていた38万円の所得控除がなくなるのでこの分の税額がアップする。しかし一般的には従来の年末調整のときと同様に、配偶者特別控除を加味して確定申告をしてしまうことが多いと思われる。その結果、忘れた頃に税務署から修正申告の有無についての通知があり驚くことになる。
  また、住民税は次年度に支払うことになるので、給与天引きだと大きな負担になる。税金を支払う段になったとき、手元に現金がないと借金をして対応するハメになってしまう。
  このような事態を避けるためには、契約者を妻にすれば相続税の対象となり、妻によほどの財産がない限り課税されない。しかし妻が無職の場合は、実質保険料負担者は夫とみなされ、夫の一時所得とされてしまう。それを防ぐためには、保険料を贈与する必要がある。所定の要件を整えて妻に贈与すれば、実質保険料負担者(契約者)は妻と税務署も認めて相続税の対象となり、税金はほとんどの場合かからない。妻に対する贈与(保険料)も一考する価値があるだろう。
【事例】
給与所得のみでの課税対象額が700万円であったサラリーマン
加入生命保険(被保険者:妻、受取人:夫、死亡保険金 1,500万円、既払込保険料 70万円)

『所得税』
(1) 給与所得のみの所得税額 700万円×20%−33万円=107万円
(2) 給与所得と死亡保険金の場合の所得税額  
1. 契約者が夫 死亡保険金は一時所得として課税
  課税対象金額 700万円+(1,500万円−70万円−50万円)/2=1,390万円
  所得税額 1,390万円×30%−123万円=294万円
  (1)と(2)の1.を比較すると所得税額は、187万円増加
2. 契約者が妻 死亡保険金は相続税の対象
  1500万円は相続税の基礎控除額以内ですので、相続税は課税されない

『住民税』 住民税の所得割(課税対象額を所得税の場合と同様と想定)
  上記(1)の場合 700万円×10%−10万円=60万円
  上記(2)の1.の場合 1,390万円×13%−31万円=149.7万円
  所得税額1,390万円×30%−123万円=294万円
  (1)と(2)の1.を比較すると住民税額は、89.7万円増加
『所得税』と『住民税』の増加分合計は、276.7万円
  〔設定課税対象額と生命保険で単純に概算計算〕
2002.06.11
前のページにもどる
ページトップへ