>  今週のトピックス >  No.429
追いつめられる中高年失業者
●景気回復で新規求人数に増加のきざし
  総務省の労働力調査によると、4月の完全失業率は5.2%と前月と同水準となった。相変わらず厳しい雇用環境は続いているが、明るい兆しが見えはじめている。雇用関連の指標のうち、先行指標と位置付けられる新規求人が、前月比6.8%増と急回復しているのだ。これは米国やアジアの景気回復で、自動車や電機機械などの求人が増加したことが大きな要因だ。国内を見渡せば、構造改革の進展が遅れ根本的な景気回復にはほど遠い状況だが、外需に支えられてなんとか雇用が持ち直しつつある。
●世帯主の失業が増え、失業の長期化が進む
  だが、安心してはいられない。失業率の数字を読み解くと、状況はかえって以前より悪くなりつつあるようだ。まず、企業の倒産や解雇など離職を余儀なくされた失業者は過去最多の161万人。このうち45歳から64歳までの中高年が前年同月比で15万人増加した。この層と重なる世帯主の完全失業者数は180万人と過去最多を記録している。
  また、新規求人が増えたとはいえ、常用雇用(正社員)は9カ月連続で減っている。増えているのはパートやアルバイトなどの臨時雇用に過ぎない。いまや雇用労働者のうちパートや派遣社員、契約社員などが28%を占める。企業がコストのかかる中高年の正社員をリストラし、低コスト労働者に置き換えていることがよく分かる。
  さらに深刻なのは、失業期間の長期化だ。現在、完全失業者数の3人に1人が1年以上にわたり失業している。中高年がいったん失職すると、年齢制限や企業が求める能力とのミスマッチにより再就職が難しいことが大きな壁になっている。
●教育訓練給付金の引き下げで再教育が困難に
  雇用のミスマッチ解消には失業者の再教育が欠かせないが、雇用保険の財政難によりこちらも厳しさを増している。これまで受講料の8割(上限30万円)を支給していた教育訓練給付金について、厚生労働省が来年度から上限額と給付率を引き下げる検討をはじめたからだ。離職者については在職者より給付率を高くする方向だが、それでも金額の低下は避けられない。そもそもこの制度は離職から1年以内でないと受けられないため、失業の長期化には対応できないという難点もある。
●来年度より失業手当の給付額が削減される
  また、2003年度からは、失業手当の金額が高い失業者について、給付額を離職前の賃金の6割から5割程度に減らすことも検討されている。対象となるのは、年功序列制度の影響で給付額が高くなりがちな中高年層だ。いくら給付額が高いといっても、せいぜい日額1万円程度で、支給日数は最高でも1年に満たない。失業保険だけが命綱の中高年には酷な話である。
  再就職できない中高年は自営業になるしかないのかと思いきや、自営業者は前年同月比55万人減と27カ月連続で減少している。職を失った中高年が、再び生きがいを持って働くことがいかに難しいかを痛感させられる。雇用の実情にあった政府の対策が強く求められる。
(マネーライター  本田 桂子)
2002.06.11
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