>  今週のトピックス >  No.432
日本国債の格下げが意味するもの
  2002年5月31日、日本経済において歴史的な出来事が起こった。米国の大手格付け会社ムーディーズは、日本国政府が発行する円建て債券、いわゆる国債をAa3からA2に2ノッチ引き下げたのだ。
  ムーディーズはまた一方で、今回の格下げによる民間企業の影響について、直接・間接的にも受けることはないとコメントしている。だが、原則的に国債は国内企業や地方自治体の発行する債券の中では最も信用力があるため、国債を上回る格付けは存在しないことになる。従って、国債の格下げの影響で、国内企業などの格下げが連鎖的に引き起こることは十分に予想される。これは世界における日本の立場を大きく揺るがすこととなり、日本国内で生活をするわたしたちにとっても好ましい出来事とはいえないだろう。
  では、ムーディーズが日本の格付けをどの程度まで引き下げたのか、もうひとつの代表的格付け会社であるスタンダード・アンド・プアーズ社(以下S&P)の格付けと併せてみると以下のようになる。
  これを見る限り、世界の先進国に大きく遅れをとった結果となっていることは一目瞭然である。
  一方、日本政府はこの結果に不快感を表明すると同時に、格付けの説明を求める動きを見せている。その政府の対応を横目に株式市場は、すでにこの格下げは「織り込み済み」として冷静な対応を見せている。為替市場にいたってはさらに円高進行し、信用力が低下した国の通貨とは思えない動きをしているのである。
  今回の格付け問題に関し、ムーディーズのいい分と日本政府のいい分はどちらにも一理あるのではないか。
  ムーディーズは、今回の格下げの最大の要因は、国債などいわゆる国の借金が際立って多い(現在約700兆円)ことを挙げている。確かに日本の債務はある意味で危険水域に達しており、このことが国民にも大きな将来不安を与えていることは否定できない事実であろう。
  一方で政府が主張するように、日本の国内総生産(GDP)、政府や企業の対外純資産は他国と比較してもトップレベルにあることもまた事実であり、このことが格付けに反映されないのは公平といえないとする点は理解できる。
  日本の対外純資産は2001年末現在で179兆2570億円(前年比34.7%増加)、11年連続世界一の債権国である。その世界一の債権国の国債が、先進国で最も低い格付けというのは少々疑問が残る。しかし格付け会社は、将来を加味して現在の格付けを行い、投資家が投資をする際の判断材料を提供しているのであり、日本の現状だけを格付けしているわけではない。さらにいえば、たとえ現在・過去の遺産で世界一の対外純資産を築いているとしても、日本の現状が改善されなければ、いずれムーディーズの格付けのような先進国で最低の財務内容・貯蓄水準の国になるだろうことは否めない。
  ムーディーズのいい分と政府のいい分、どちらが正しいかは賛否両論であろうが、海外から見た日本の姿は、わたしたちが思っている日本の現状とは大きなズレがあり、今回の格下げによって、海外投資家の日本を見る目は今後さらに厳しさを増すことだけは間違いないであろう。
2002.06.18
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