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アジアマネーの動向と個人の海外投資
  現在の日本はムーディーズによる日本国債2段階引き下げや、多額の不良債権処理による銀行の赤字決算続出など暗いニュースに事欠かない。そのような状況を尻目に、日本を除くアジア諸国の外貨準備高はここ最近急増しており、国際金融市場におけるアジアマネーの存在感が際立ってきている。
  外貨準備高とは、政府・中央銀行が保有している自国以外の通貨などを意味しており、対外的な支払いの準備資産として国家の信用力を示すものであるといわれる。アジア9カ国(中国・韓国・マレーシア・タイ・フィリピン・シンガポール・台湾・香港・インドネシア)の外貨準備高は、2002年3月末で7,000億ドルを上回っており、この数値は日・米・欧の合計を上回る水準に達している。特に最近躍進目覚しい中国の外貨準備高は2,276億ドルと、前年比30%弱も増加している。
  この背景には以下のような流れがある。
「同国に対する直接投資の急増による海外からの人民元買い」
「その影響による元高の進行」
「急速な元高進行を抑制し為替相場を安定させる目的から中央銀行のドル買い介入」
  中国の驚異的成長を支えているのは日米への輸出であり、人民元高はその輸出へのブレーキになりかねない。そのため、国家として元高を抑制することで輸出産業を支援していることは言うまでもない。
  もうひとつ注目すべき点は、アジア各国が増加している外貨準備高の運用において、従来のようにドルに偏った投資を行うのではなく、通貨の分散を行っていることである。例えば、中国は外貨に占めるユーロの比率を約15%から20%台に引き上げる方針を打ち出している(これにより、ユーロに対するドル安の可能性が高まる)。もしアジアマネーの「ドルからユーロへ」という流れが今後も継続するならば、さらなるドル安・ユーロ高になる可能性も十分考えられる。
  このようなアジアマネーの動向は、過去最高を記録している日本の外貨資産投資においても、少なからず影響を及ぼし始めていることは間違いなさそうである。
  例えば、日本国内の為替動向において、2001年10月から2002年6月までのドル・ユーロの対円レートをみると以下の通りである。ドルからユーロへという動きが加速した結果、6月頃からユーロ高・ドル安という傾向が始まっている。
昨年10月からの為替レート推移(単位:円)
  01/10/1 01/11/1 01/12/3 02/1/4 02/2/1 02/3/1 02/4/1 02/5/1 02/6/19
ドル 111.9 122.4 123.3 131.7 134.7 133.45 133.15 128.6 124.26
ユーロ 108.67 110.17 110.46 118.39 115.8 115.91 116.11 115.75 118.59
  このような一連の動きから次の2点を学ぶことができる。
  1. 日本以外のアジア諸国は、高度経済成長により着実に経済力をつけてきており、国際金融市場においても影響を及ぼし始めている。よって、海外投資を行うときには日米欧だけでなく、アジアマネーの動向にも注意が必要である。

  2. 2002年1月から現金の流通が始まったユーロは着実に存在感を増しており、ドル・ユーロの2大外貨体制を構築しつつある。よって、海外投資を行う場合ドルだけに偏った投資ではなく、ユーロを組み込んだ分散投資が、今後ますます重要性を増す可能性が高まるだろう(そのことは、多額の外貨を保有しつつあるアジア各国の外貨準備高の運用においても明らかである)。
  日本の景気の現状を考えれば、今後も個人金融資産が海外資産へ流出する可能性が高いと思われる。個人は、外貨預金などの高金利にのみ目を奪われがちだが、海外投資に関して以上の2点のアドバイスは役に立つものと思われる。
2002.07.02
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