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掛け金総額以上の年金は受け取れる?
〜厚生労働省20歳夫婦世帯の年金モデル試算を提示〜
  厚生労働省は7月22日、2002年に20歳同士の夫婦が国民年金(もしくは厚生年金)に加入した場合、生涯に受け取る年金総額のモデル試算をまとめた。
  2001年の交通事故による死亡数は1万人の大台を下回り、1996年以降減少傾向にある。しかし、交通事故の発生件数、負傷者数は増加しており、10年前と比較して車両数で1,000万台、免許人口は1,100万人も増えている。免許保有者は7,500万人に達し、18歳以上75歳未満の人口(約9,500万人)に対し約8割で、交通事故の危険性は依然として高いといえる。
  これによると、60歳まで保険料を掛け続けた場合、国民年金で月額13.4万円、生涯に受け取る給付総額は3,100万円と試算している。同様に厚生年金では月額23.8万円、総額5,600万円が給付されるとしている。一方、払込保険料の総額は、国民年金が2,100万円、厚生年金は2,200万円で、給付総額と保険料総額(自己負担分)の比率はそれぞれ1.47倍、2.54倍で、いずれも受け取る総額が多くなっている。
「払う保険料総額と給付総額」(本人負担分)
(注)
厚生年金は報酬月額47.4万円(総報酬ベース)、妻は専業主婦と仮定、ピーク時の保険料は年収の21.6%、国民年金はピーク時保険料25,200円と想定。夫は81.5歳、妻は86.1歳まで受給(60歳時の平均余命)。基礎年金国庫負担を1/2に引き上げる日付を2004年10月と想定。
  現行の公的年金制度は積立方式ではなく賦課方式のため、払った保険料よりも受け取る年金額が少なくなるのでは、という若い世代の不安を払拭した形だ(厚生年金の場合、実際には本人負担と同額を事業主が負担する)。
  しかし、2004年に予定している年金制度改革では、高齢者の受給中の年金をカットする案が浮上している。現行制度を維持するためには、保険料率を2025年には31.9%にする必要があるという試算も出されており、現役世代の負担限界を考慮すればのめない数値である。厚生労働省の今回の試算の基礎となっているピーク時の保険料率では、賄いきれない給付総額ではないかと思われる。現に5年ごとに行われる制度見直しでは、いずれのときにも料率の変更や、開始年齢の引き上げなどがされてきた。
厚生年金保険料率の推移
国民年金保険料の推移
資料:いずれも厚生労働省「年金と財政」より作成
現行制度での試算という制約はあるものの、20代の夫婦がこの試算をもって老後計画を立てるには無理があると思われる。
2002.08.06
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