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毎月分配型投信を考える
  投信市場はエンロンショックによるMMFの残高減少に加え、日本株の低迷などにより純資産残高が40兆円割れとなり苦戦が続いている。その環境下において、最近着実に純資産残高を伸ばして注目を集めているのが「毎月分配型」の投資信託である。この商品は主に海外債券に投資され、その運用収益は極力毎月の分配金にまわすという商品である。通常の投資信託は、一般的に運用収益の一部を年1回もしくは2回程度分配されるのに対して、分配金の回数が毎月と多いのがこの商品の大きな特徴である。
  では毎月分配型は、顧客にとってどのようなメリットや注意点があるのかを考えてみる。
  メリットとして、主に次の2つが挙げられる。
(1)
毎月分配型の分配金を個人年金のように活用できる。事実このタイプの商品は、銀行窓販においても高齢者(公的年金受給者)に人気が高い。
(2)
分配金が毎月支払われるため、運用収益がその都度確定する。
  言い換えれば、運用収益がその後の運用環境の影響を受けないということである。例えば、運用収益を極力分配しない方針の投資信託の場合、運用収益は基準価格に組み込まれる。その結果、基準価格が上昇する。その後、運用環境が悪化してしまえば、基準価格に組み込まれた部分も当然のことながら価値が低下する。つまり、過去いくら運用成果を上げても、その後の運用環境が悪化すれば、基準価格に組み込まれた過去の運用収益分も少なからず影響を受けることになる。しかし、毎月分配型は運用収益を極力その都度の分配金にまわすため、分配された運用収益がその後の運用環境の影響を受けることはないのである。この点も考えようによってはメリットといえるであろう。
  一方で、このタイプの商品に投資する場合の注意点は次の3点が挙げられる。
(1)
この商品は主に海外の債券で運用されるため、分配金が為替相場(円高)の影響を受ける。
 
具体的にいえば、円高になると最大の魅力といえる分配金が出なくなる可能性があるということである。事実、この毎月分配金タイプは1997年にも一度ブームがあったが、円高などにより分配金が低下しブームが下火になったという苦い歴史がある(当然円安になれば、このデメリットはメリットになる)。
(2)
投資元本の保証はない。
 
高齢者の一部は、分配金が毎月出る点だけに注目して、投資元本が変動すること(当然、元本を大きく上回る可能性もあるが)を見落し勝ちとなるので注意する必要がある。また、同じ毎月分配型投信であっても、投資先は「先進国の国債」から「新興国の各種債券」まで商品ごとに大きく異なっている。特に、分配金の源泉が新興国の債券によるものは、リターンが高い代わりに組み込まれた債券自体がデフォルト(債務不履行)を起こす可能性があるので投資する際には要注意である。
(2)
一部の商品で運用会社の裁量で分配水準を調整できるものもある。
 
一見、投資家にとって安定的な分配はメリットのように感じるかもしれないが、分配金の源泉が債券の運用収益であることを考えれば、常に安定的な分配水準を維持すること自体に若干の違和感がある。安定的分配水準を維持するあまりに、投資元本部分から分配金を出すいわゆるたこ足的なことになる可能性もある。
  注意点を挙げればきりがないが、厚生年金の給付水準5%カットや消費者物価指数のマイナスなどにより、今後、公的年金の給付水準引き下げの可能性も十分考えられる現在において、公的年金を補完する金融商品として、消費者ニーズに毎月分配型が応えていることは、販売額および残高の増加が証明している(事実、顧客の許容範囲内の金額で、賢く利用すれば非常に魅力的な商品である)。
  今後、一部の個人年金と比較される可能性もある毎月分配型投信に関して、相談を受けた場合は、以下の4点を中心にチェックしながら、顧客が求めている的確なアドバイスをしたい。
  1. リターンの源泉は外国国債かそれ以外か
  2. 投資金額はいくらにするか
  3. 過去の分配水準はどうか(過度に水準を安定維持させていないか)
  4. 購入・保有にかかる手数料などは高くないか
2002.08.13
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