>  今週のトピックス >  No.476
公的年金制度改正で検討課題になった「スウェーデン方式」
  2002年1月に発表された最新の将来人口推計(国立社会保障・人口問題研究所)において、出生率の回復はほとんど望めないことが明らかとなり、少子高齢化の流れが決定的となった。そのような中、5年ごとに行われる次期公的年金制度改正(2004年度)へ向け、さまざまな議論が行われている。
  公的年金をめぐる議論の中でにわかに注目を集めているのが、1999年に行われたスウェーデンの年金制度改正である。これは、将来にわたって公的年金の料率を18.5%に固定した上で、人口構成や経済状況などの変化に応じて、給付水準を自動的に調整する方式だ。日本では、これまで保険料率と給付を同時に調整する公的年金制度改正が行われてきたが、少子高齢化の進行により保険料率の引き上げと給付の削減が繰り返されたため、公的年金に対する不信感を引き起こしたとの批判がなされている。
  こうした中、公的年金を所管する厚生労働省は、7月2日、年金の給付と負担に関する論点の中で、「スウェーデン方式」の採用の是非を社会保障審議会年金部会に提示した。同部会ではこれを受け、7月19日「スウェーデン方式」を次期年金制度改正での検討対象とすることを決定した。
  スウェーデン方式は自動調整方式のため、これまでの年金制度改正と異なり、政治的な思惑や行政の裁量によって左右される余地が少なく、不信感の解消には寄与する面が大きいとみられる。しかし、これまでは既得権として保護されてきた受給権者の年金削減にも踏み込むこととなり、加えて急速な少子高齢化が予想される日本では大幅な給付削減に見舞われる恐れがあるなど、課題点もあり、今後の議論が注目される
参考:
厚生労働省の社会保障審議会年金部会への提出資料より抜粋
我が国において、人口構造や経済情勢の変化等の外生的な社会経済情勢の変動を踏まえた今後の給付と負担の関係について、どう考えるか。
〜(中略)〜
将来にわたって保険料水準を固定し、その後、人口構造や経済情勢の変化等の外生的な社会経済情勢が想定を超えて変動するときに、給付内容を自動的に調整することとした場合、将来、社会経済情勢が想定を超えて悪化すると実質的な年金水準が低下することとなるが、その低下はどこまで許容されるか。また、この場合、年金給付のスライドの在り方とも関わるが、自動調整の手法についてどう考えるか。
2002.09.03
前のページにもどる
ページトップへ