>  今週のトピックス >  No.491
一戸建て工事の欠陥に潜むリスクに注意を
  一般的に3,000万円から4,000万円の住宅ローンを用立てして新築するのが一戸建て注文住宅である。
  これは庶民の夢なのだが、実はここに大きなリスクが潜んでいる。手抜きや工務店のずさんな工事による欠陥住宅だ。もちろん、住宅建設に当たっては構造体をはじめとして「保証制度」があり、10年間にわたって欠陥は保証される。
  生保の「ローン保証」も、これら信用保証の上に成り立っている。しかし、住宅の欠陥は目に見えるところだけに存在するわけではない。たとえば、建設後ではわからない土台の強度、床の下の部材の汚れや亀裂、壁の接合部の不具合、柱を連結する金具の省略、この様なものは長い間にわたってじわりじわりとその欠陥が表面化し、家をむしばむ、時には10年間の保証が切れてから問題になることもある。
  欠陥は街の工務店の請けた建物と言うよりは大手のハウスメーカーの建物にむしろ多い。なぜこうなるかと言えば、採算重視にある。大手と言っても実際の工事は「協力工務店」と言う名の小さな工務店の仕事である。契約や設計は大手が受けるが現場施工は工務店や一人大工さん(頭領)である。
  彼らは多くの現場をかかえて、忙しく働いている。そのために、たとえば雨が降ってツーバイフォー工法の床がずぶぬれになってもシートをかぶせる暇はない。また、採算を求めるために、できあがればわからない接合部の金具を省略することは可能だ。
  ひどいときには接着剤は規定のものではなく、量販店で販売している割安のものが使われた例もある。このような欠陥を隠した住宅に高いローンを組んで支払い、生保は保証を付ける。依頼主もローン関係者も欠陥には容易には気がつかない。なぜかと言えば、大手の現場監督のサインがついた保証の完工には疑いを挟む余裕はほとんどと言って良いくらいないからである。いちいち疑問を持っていたら仕事が進まないから信頼するしかないのだ。そこに落とし穴がある。
  この常識に実は大きな落とし穴があるのだ。その当事者になった依頼主や保証会社は被害者になる。住宅はクレーム産業といわれるが、この様な欠陥工事が裁判などの争いのタネになる。これは依頼主にとっても、請負側のメーカーにとっても、実に困ったことである。いい加減な仕事はどこかで足を出す。結果的にマイナスである。
  特に恐いのは、ハウスメーカーの評判は依頼主から口コミで広く伝わる。せっかくのコマーシャル効果がはげ落ちてしまうのだ。何事も目に見えないところほど誠実にしなければならない。今日もどこかで一戸建てが建てられているが、「わからないだろう」という心の透き間が実は大きなマイナスを生むことに気がつかなければならない。
  現在の新築住宅は戸数的には減少しそれはさらに下り坂にある。目玉はリフォーム産業に移行しつつある。ほとんどのメーカーはこの方面のビジネスに力を入れている。
  しかし、保証期間内の手直し、欠陥対策はお金にはならない。しかも、リフォームの仕事ではない。この様な工事は予算がかかるし、評判を落とす。十分に注意深く誠実に立ち向かうべきである。
(経済評論家  石井 勝利)
2002.10.01
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