>  今週のトピックス >  No.493
求職者ユニオンで団結する中高年労働者たち
●再就職を目指す中高年者らが「ユニオン」を設立
  中高年の求職者らが中心となった市民団体「求職者ユニオン」の設立総会が9月21日に開かれた。代表者によると、「日本で唯一、求職者による求職者のためのユニオン」だという。総会に参加したのは25人と少ないが、同ユニオンでは今後、賛同者を増やすとともに求職者の団結と組織化を目指して活動を進める予定だ。
●いまも残る「年齢差別」の壁
  求職者ユニオンが大きな目標として掲げているのは、求職活動における年齢制限の撤廃だ。2001年11月に改正雇用対策法が制定され、労働者の募集・採用において年齢差別をなくす努力義務が企業に課された。しかし、特定の状況においては年齢制限が許されるという免除規定が10項目もあり、実態は骨抜きに近い。求人公告では年齢不問としている企業も、実際は若年層の採用しか念頭に置いていないケースも多く、中高年求職者からは不満の声が漏れている。
  これは、採用時の年齢差別が禁止条項ではなく、単なる努力義務にすぎないことが大きな原因だ。これでは差別撤廃は口先だけで、実際は若年層を優先的に採用する雇用の現場はなかなか変わらない。1986年に制定された男女雇用機会均等法も制定当初は同じような状況だったが、13年かかって努力規定から禁止規定に強化され、ようやく実効性が期待できるようになった。果たして、年齢差別禁止が強制規定になるのに、これから何年かかるのだろうか。アメリカでは1967年に年齢差別禁止法が制定されたことを考えると、日本は遅れているといわざるをえない。
●中高年を戦力化する動きも
  企業が中高年の採用を敬遠するのは、「中高年は使い勝手が悪く、人件費が高い」というイメージがあるせいだ。だが、最近になってその動きに変化が見られるようになった。積極的に中高年を採用したり、中高年派遣を行う業者が増えるなど、中高年を戦力化する動きが出ている。ある大手派遣会社では、現在月100件の派遣数が2003年度には3倍に拡大する見込みだという。最近、45歳以上の人材派遣期間を1年から3年に延長されたことも、中高年の派遣拡大を後押ししている。中高年が必要とされるのは総務や経理、コールセンターのクレーム対応、営業など、長年の実務経験を活かせる分野が中心だ。また、ここ数年、中高年だけの会社を興す例が増えているという。
  齢差別が現存する一方で、年齢を武器に仕事を得る中高年も増えつつある現状は、中高年者の置かれている状況の複雑さを表わしている。今後、少子高齢化が進めば労働者不足が表面化するのは確実であり、企業はいやおうなく中高年や女性労働者を雇用することになるだろう。現在はそれまでの過渡期といえる。だが、すでに失業している中高年者にとっては現在の雇用確保が第一だ。求職者ユニオンの結成は、中高年が、もう国が何とかしてくれるという期待を捨て、自分で行動をおこさなければ道は開けないことを悟った証なのかもしれない。100万人を超える中高年失業者をバックに、求職者ユニオンの活動が今後どのような広がりを見せるかが注目される。
(マネーライター  本田 桂子)
2002.10.01
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